. ページ24
橙side〜
「ねぇ！かいと！！！」
歳下だけど、俺の一番の、気の置けない友だちで、家族。
気が弱くって、施設で意地悪をされがちだった俺を助けてくれるのもいつも元太だった。
施設を夜中に抜け出しては二人で怒られて。
怒られて泣いている俺とは対照的にヘラヘラと笑っているのが元太だった。
そんな元太は、“本当の家族”を知らなくて。
それを元太自身が皆が思っているよりも気にしていて。
だから、元太が嬉しそうに、“お母さんと一緒に暮らせる事になった”って報告してきてくれた時は、俺も凄く嬉しかった。
だけど。
「…元太くんみたいな男の子、今、門の前で見えたんだけど、」
「…え、本当ですか、……もしかして、」
その夜は、トイレに行きたくて。
一人で廊下を歩いている時に聞こえた、先生同士の会話。
「…虐待、かも知れない、」
その言葉を聞いて、俺は走って外へ出た。
「……げんた、！！」
真冬だと言うのに、薄着の男の子の後ろ姿が見えて、思わずそう叫べば、ビクッと肩を揺らしたその男の子は、コチラを振り向きもせずに走っていってしまって。
「コラコラ、海斗くん、靴も履かないで、何してるの！？」
「…わっ、」
俺が外に出た事に気がついた先生に抱き上げられてしまって、その男の子を追いかけることは叶わなかった。
「………………げん、た、」
自分でも聞き取れないくらい、口からこぼれ落ちた小さな声は、誰にも届くこと無く真っ暗な闇に吸い込まれて行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うらの(プロフ) - 初めまして。作品があまりに素敵で感動しました。随所に心がまっすぐなmtさん心がきれいなmcさんの気持ちが見れてとても心が暖かくなりました。素敵な作品をありがとうございました。 (9月22日 23時) (
レス) @page50 id: 188a7a4fbd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紗彩 | 作成日時：2022年1月21日 0時
