検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:2,766 hit

痛みを四針 ページ4

深い闇の中にいるであろう男の意識に、とびきり優しく話しかけようと、口を開く。



これまでに学んだことだ。



高圧的なだけでは警戒されてしまう。



かといってこちらの隙を見せればあっという間につけ込まれる。



以前の契約者も言っていたが、人間というものは、気まぐれで繊細なものなのだ。



だから彼女は、ありもしない悪意を決して悟らせぬよう───





(───、邪魔)





ベアトリーチェが男へ伸ばした左手は、何者かによって阻害される。



反射的に整った眉を寄せた。



この状況の中、死んだ人間に対して興味を持つ者などそれしかいない。





「…お前さぁ、こいつは僕の獲物なわけぇ。邪魔しないでくれるぅ?…あは」





恐らく先程やって来たばかりなのだろう、僅かに地上慣れしていない雰囲気を持ったその悪魔。



既視感の無いその容姿ということは、つい先日堕ちてきたのかもしれない。



ベアトリーチェは長い間地獄を離れていたため、もしかするとだいぶ前からいたのかもしれないが。



どちらにせよ、彼女の噂───悪評と言うべきか───は伝わっていたらしく、鋭い眼光を見せればヒィ、と弱々しく逃げていった。





「あのくらいで情けないなぁ…ねぇ?お前もそう思うでしょぉ?」





右腕の方に抱えていた猫のぬいぐるみに語りかけた。



ベアトリーチェの髪と同じ薄紫色の布で作られたそれは、彼女の動きと共に軽やかに揺れる。



当然返事などはないが、彼女は満足気に微笑み、再び男の方へ顔を向けた。





「さっきは邪魔が入っちゃったけどぉ…今度はお話できるねぇ。あは」





───悪魔の契約は、すぐ目の前まで。

痛みを五針→←痛みを三針



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
設定タグ:終末戦記 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:竜胆 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年7月26日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。