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その時は唐突に、そして最高の場面でやってきた。
皆で繋いで、繋いで、離されて。
1点ビハインドで迎えた9回ウラ。
翔平さんがツーベースで出塁。続く正尚さんもフォアボールで出塁しようというところ。
89「大成、準備しておいてくれ。送りバントで行こうと思う」
05「俺、っすか…やべ、緊張してきた」
妥当な判断、だと思う。ネクストにいるムネは、今日3打席3三振。
でも、何かやってくれるんじゃないかって思うのは私だけなのかな。
89「佑京、正尚の代走行ってくれ」
09「うす」
『あの、次はムネで行きましょう』
89「どうしてそう思う?」
あぁ、私のこの一言で、運命が変わるんじゃないかな。
『勘、です』
___ムネが56号を打ったのは、シーズン最終戦の最終打席だった。何でよりによってうちのチームの時に打つんだよって思ったけど、ホンモノはやっぱ運も持ってるんだなって感じの一発。
ムネなら、やってくれるんじゃないかな、きっと。
『私、彼が王さんを超えた瞬間を、この目で見てますから』
89「信じてみよう、Aちゃんの勘を」
34「Aちゃんって、結構ギャンブラーだね」
『それは監督も同じですよ?ちょっとムネのところ行ってきます』
ネクストでバットを振るムネのところへ向かう。
『よっ』
55「うぃ」
『これで打ったら、教科書載れるよ』
55「そんな下心ねぇわ」
『そうなの?ま、それはさておき。ヒーローは遅れてやって来るって言うじゃない』
55「…」
『生き返れ、村上!』
私の思い、メンバーの思い、野球を愛する全ての人たちの思いを勝手に乗せて、強く背中を叩いた。
55「…痛ぇよ」
笑って拳を重ねた。
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アナ「村上打ったー!村上が、村上が、村上だぁぁ!!!大谷ホームイン!周東もホームイン!サヨナラァァァァァァ!!!!!!」
これは夢?それとも___
55「よっしゃぁぁぁぁ!!!Aー!!!!!」
『…………夢じゃ、ないんじゃ』
涙がこぼれる。
溢れて。
溢れて。
もう止められない。
やっぱりコイツは、何か持ってる。
16「やるじゃんムネ!おめでとう!」
55「うっす!あざーす!!」
03「遅ぇぞムネ!!」
55「すんません!!」
このチームが優勝しない未来なんて、私には見えないよ。
55「……打ったよ」
『うん、見てた』
55「何かないの?」
『……おはよう、ムネ』
55「うーわ、ちょっとカッコつけたべ」
『あはは』
最後に目覚めた若燕は、日本中に歓喜の渦を描き出した。
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きまぐれ(プロフ) - リュカさん» リュカさん!ありがとうございます! (5月22日 16時) (レス) id: 43ec8f9ef2 (このIDを非表示/違反報告)
リュカ(プロフ) - 応援してます! (5月19日 17時) (レス) id: 56c473763c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きまぐれ | 作成日時:2023年5月14日 10時