story35 「薬の意味」 ページ36
〜アッシュside〜
Aを横抱きにし、おっさんと共に医務室へと運んでいる間も笑顔とは対照的に、体はずっと悲鳴をあげるように震えていた。
本当は怖いはずだ。
俺だって初めての時は立ち直るのに時間がかかった。
なのにAは、俺達に心配を掛けない様にしようとしてるのか隣を歩くおっさんにずっと話しかけている。
「マックスの奥さんって美人?」
「え?あぁ、顔は綺麗だな!顔は……」
「性格はまさか鬼なのでは…」
「よく分かったな!」
「マジかー!鬼なら狙いにいけねー!」
いつも通り内容の薄いバカみたいな話だが、Aが無理をしていることはおっさんも気づいているようで、出来るだけ話を続けようと話題をコロコロ変えながら話している。
そして医務室に着き、俺はベッドの上にAを寝かせた。
「大丈夫か?」
「おうよ!何の問題もなーい!」
医務室にいる主治医に怪我をしていないか見てもらっている間、俺はAの隣でずっと手を握っていた。
Aは「子供じゃないんだから放せよ」とずっと言っていたが、俺はその言葉を無視し握り続けた。
「うん、異常はないみたいだね」
「あ、先生。俺さぁ、最近頭がスゲー痛くて」
「頭?」
「うん。だから薬欲しんだけど、粉薬とか俺飲めないからカプセルとかにしてくんない?」
「注文の多い奴だなー。ちゃんと此処で飲めよ」
「了解!」
頭が痛かったなんて近くに居たのに気づかなかった。
どうして黙ってたんだ。コイツは。
診察も終わり医務室を出た後、俺はAに問いつめた。
「頭が痛かったのか」
「え?」
「一体いつからだ、何で言わなかった」
「いや、あの……」
「体調が悪いなら俺かマックスに言うべきだろ!」
「違うんだって!」
焦った表情でAが俺よりも声をはった。
広げられた掌の上には、さっき飲んだはずの薬があった。
「飲んでなかったのか?」
「アッシュ、最近眉間押さえてること多かったからさ、頭痛いんじゃないかと思って心配してたんだよ」
頬を掻きながら、恥ずかしそうに目線を逸らすA。
「要らないなら別のことにでも使えよ!」
半端強引に俺へと薬を渡したAは、少し離れた所で待っていたおっさんの方へと駆け寄って行った。
A……。
アイツの放った最後の言葉が妙に気になりながらも、俺は二人の後を追った。
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沖田さくら(プロフ) - 佐久菜さん» コメントありがとうございます!一気見して下さったんですか?!嬉しいです!楽しんで読んで頂ける様、これからも頑張ります! (2020年5月2日 9時) (レス) id: 43edebc781 (このIDを非表示/違反報告)
佐久菜 - めっちゃ面白いです!つい一気読みしてしまいました笑これからも頑張ってください! (2020年5月2日 6時) (レス) id: e5ff1d5bd2 (このIDを非表示/違反報告)
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