銀魂 真選組の天涯秘蔵 【完】

８１話＊ ページ31

視界が歪んでいくのを感じた。
膝が笑って、立ち方も忘れてしまったようだった。

お母さん、やっと知った母親の名前が全く知らない赤の他人にしか思えない。
昔はまた会えることを信じて、毎日想像していた。


顔も、



声も、



優しい言葉も。

いつからか、想像するのも辛くなって忘れていたんだ。

自分で、忘れようとしていた。

孤独ではないことを認めたくて、無い母より
そばにいる兄さんたちを大切とした。


これは罰なのか。
産んでくれた母親を忘れ、一人何事もなかったかのように生きてきた。


この事を、兄さんたちは知っていたのかな。
名字をつけなかったのは、母親のことが知られないように。
総にぃは…知らなかったのかも知れない。
昔書いた手紙の宛先を探してくれると約束した



会いたい。兄さんたちに会って、ちゃんと話を聞きたい。

足を地面にしっかりとつけて、自分を取り巻く男を見据える。


「気持ちに整理はついたか？俺たちと一緒に来いよ。おふくろに会わせてやるぞ」

……いい、今ついて行ったら行けない。
それに今は知らない母親よりも兄さんたちに会いたい。

A「悪いけど、付いて行かない。帰らなきゃいけないから」

私の一言で、空気を変えた。
中には刀に手をかけた奴もいる。

A「抜刀なんてしたら、それこそトシにぃたちに捕まりますよ」

「……兄さん、ねぇ。お前、本当に帰れんのか？兄さんたちの所に」

ー「俺たちはなぁ、暁組って言う攘夷グループなんだよ。お前は俺たちの縁者なんだぜ？」

この、人たちが攘夷志士で、私が、その縁者？

攘夷志士は、総にぃたちの敵で私は、その仲間？

ふっと、頭によぎったのは、上の兄さんが考えたあの決まりだった。


＿＿敵と内通せしもの、これを罰する。


私はこの、敵と内通するものなのかな。
私、もう総にぃたちの所に行けないのかな。


「お前のことは仲間だと思ってる。一緒に来いよ、お前の剣の腕で世界を変えようぜ」


私、どうすればいいんですか……
どんな顔して、どこに帰ればいいんですか……

８２話＊ 追記→←８０話＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す