Red Rose 〜もう１つのバチェラー・ジャパン〜

バチェラー・綾瀬悠真の存在について少しだけ ページ2

世界各地で放送されている恋愛リアリティ番組、「The Bachelor」。

そしてその日本版、「バチェラー・ジャパン」の参加者に選ばれた、一人の男と十人の女。

たった一人の男の心を十人の女が奪い合う台本の無いラブストーリーは、やがてバチェラーとただ一人、選ばれる「彼女」のための物語となる。

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綾瀬悠真。29歳。職業・舞台俳優。

大学時代に創設した劇団が国際的に有名になり、年がら年中世界を飛び回る日々。

どこで公演をしても一定数以上の客が入るほどの人気ぶりは、当の本人も全く想定していなかったらしい。

しがない俳優志望だった綾瀬の手には余るくらいに舞い込んでくる、金、名声、社会的地位。

社会に祭り上げられ、日に日に忙しさは増し、時は光のように過ぎてゆき、気づけば劇団を創設してから約10年。

全てを手に入れ誰から見ても完璧な好青年、しかしそんな彼にはある悩みがあった。

ーー完全に婚期を逃した。

ひたすら舞台に命をかけた生活で潰れた綾瀬の20代に、残された時間はわずか１年弱。

崖っぷち20代の綾瀬は友人の勧めをきっかけに、半ば縋り付くような心地でバチェラーに応募することを決意する。

バチェラーに選ばれることが出来れば、確実に結婚が約束されるのだ。

当たって砕ける覚悟だ。オーディションに落ちても、挑戦しただけで何かしらご利益があるかもしれない。

ともかく、綾瀬に自らが選ばれるという考えは毛頭無かった。願掛けのような物だった。

しかし書類審査にはあっさりと通り、面接は自らの経歴を話してみせただけで難なくクリア。

ついには候補者残り二人となり、Amezonの本社に呼び出され、出てきたブロンドヘアのお姉さんが最後の審査だとか言って「好きなタイプは？」という意味不明な質問を繰り出してきた。

その質問に面食らった綾瀬は、「自分をしっかりと持っている芯の強い女性です」と無難な回答。

お姉さんは「あーはいはい分かりました普通過ぎてつまんね」という表情をあからさまに顔面に貼り付け、隣のもう一人の候補者にも同じ質問。

彼は、実に元気の良い声で「ギャルが好きです！」と素直な回答。

お姉さんは「ギャルかい……」という顔で彼を一瞥。そして綾瀬の方を見つめて、確信めいた目で頷いた。

何が何やらよく分からないが、決定打になったらしい。

軍配は綾瀬の方に上がった。

かくして、綾瀬はバチェラーとしてレッドカーペットの上に立つ事になったのであった。

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