TA-5 ページ43
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午後二時。仕事に向かう剣城と別れ、お昼ご飯を食べたあと、駅前で天馬と合流した。ショッピングモールでの出来事を天馬に話すと、彼もまた不思議そうな顔をした。
「人間と悪魔が一緒に食事なんて、変だよ」
「私たちが言えた立場じゃないけどね」
「それは……そうだけど」
九坂の匂いを辿り、ある程度の方角を絞り込めた。人が集まる場所を調べると、公園の広場で開催されているクリスマスマーケットに行きついた。食べ物や衣料品、雑貨の屋台が、所狭しと立ち並んでいる。隠れるならもってこいの混雑だ。
天馬は雑貨屋の前で立ち止まると、ツリーに飾るオーナメントを手に取った。
「気に入ったものはあった？」
「天使がいるんだ」
そういって、天馬は赤いマフラーを巻いた天使のオーナメントを手に取った。目を閉じて、口元に微笑を浮かべた少年の姿をしている。
「本当だ。かわいい」
「……悪魔はいないみたい」
「そうだね。悪魔は……神様の敵だから、クリスマスをお祝いしない」
「でも、剣城は違う」
「そうだね。剣城は特別な悪魔だから」
しばらく歩いていると、どこからか甘い匂いが漂ってきた。見回すと、ホットチョコレートの看板が見えた。天馬に「ちょっと待ってて」と告げ、二杯注文する。
あたたかいホットチョコレートの上には、生クリームとハート型のマシュマロ。仕上げにたっぷりとチョコレートソースがかけられている。
一杯を天馬に渡すと、彼はカップに顔を近づけてすん、と匂いをかいだ。
「いい匂い」
「ホットチョコレートだよ」
私は少し冷ましてからでないと飲めないが、天使は熱さを感じないから冷ます必要はない。天馬は一口飲むと、途端に顔を綻ばせた。
「おいしい！」
「よかった。……あ、天馬、ちょっとじっとして」
天馬の鼻に、生クリームがついていた。ティッシュを取り、天馬の鼻に近づけ――気づいた。
コーヒーショップで、九坂は森村さんの顔に手を伸ばしていた。あのとき、森村さんの頬には、ドーナツの粉砂糖がついていた。もし九坂が、森村さんを傷つけようとしたのではなく、粉砂糖を拭おうとしていたのだとしたら。
「A？」
「ああ、ごめん」
天馬の鼻についた生クリームを拭う。彼はホットチョコレートを気に入ったようだ。
そろそろ飲める頃合いだ。私も一口啜る。
「……誘拐じゃないかも」
「え？」
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作者名：はるま | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年10月13日 0時
