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天馬が上目遣いでこちらを見つめた。
「ちょっとの間でいいんだ。俺たちをここに置いてくれない？」
「えっ？」
あからさまに嫌そうな反応をしてしまった。快諾してもらえると思っていたのか、天馬はきょとんとしている。
そんな天馬を見かね、剣城がため息をついて言った。
「親しくもない男女が、ひとつの家で共に暮らすことはまず無い」
「そっか。わかった」
そう言った次の瞬間には、天馬の姿が変わっていた。服装はほぼ変わらないが、セーターに包まれた肩は華奢になり、やや袖が余っている。背は私より低いぐらいに縮んでいた。
「これなら、どう？」
――ようするに、女の子になっていたということだ。一瞬気絶しかけたが、耐えた自分を褒めてやりたい。
「ほら、剣城も」
「俺は嫌だ。……女になればいいという問題じゃない」
まったくもってその通りである。
またも剣城に叱られた天馬は、眉を下げて俯いた。私が瞬きをした瞬間に、男の子の姿に戻っている。
剣城は呆れた様子で、「もう行くぞ」と天馬の腕を掴む。瞬間移動しようとしていることは明白だった。
「――ちょっと待って！」
二人揃って、目を丸くした。
そもそも、天使と悪魔が本当に存在するなんて、にわかにも信じ難い話だ。
しかし、私のお人好しの部分が、今の問題はそこではないと言っている。一度死んで生き返ってからずっと、冷静ではない。
――この雷雨の中、家もお金もない二人を放り出すの？
「……とりあえず、雨が止むまでなら」
その日私は、天使にも悪魔にも、もちろん人間にも、平等に雨が降り注ぐことを知った。
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to be continued…
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年9月11日 15時
