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 いても立ってもいられず、携帯を取り出した。しかし、彩花に「悪魔が近付いている」と伝えたところで、信じてもらえる可能性は極めて低い。
 それに、本人がそれを知ったところで、どうやって悪魔から身を守ればいいのだろう。

「彩花を助けられない?」

 たずねると、剣城はまた少し考えてから口を開いた。

「悪魔がいるところには天使がいるはずだ。悪魔から人間を守ることが天使の仕事だからな」
「じゃあ、その天使に任せればいい?」

 剣城は残念そうに首を横に振った。

「安心はできない。強力な悪魔なら天使を消すこともできる。……それに、天使がいるなら天使の匂いも同時に移るはずだ」
「なら、今彩花の近くに天使がいないってこと?」
「そうだろうな」
「天馬に頼めないかな? それか、強い天使にお願いするとか」
「天馬の仕事の都合によるだろうな。……だが、少なくとも俺たちは追放中の身だ。上司を呼び出せる立場じゃない」

 わかったのは、八方塞がりであることだけだった。頭の中が不安で埋め尽くされ、顔から血の気が引く。
 両膝を肘置きにして、背を丸めて両手で顔を覆う。彩花を守る方法を考えなければいけないのに、何も思い浮かばない。

 すると、剣城が「契約を結ぶのも簡単じゃない」と呟いた。
 顔を上げると、剣城は一度座り直して私を見た。

「『俺は悪魔だ。お前の願いを何でも叶えてやる』と言われて、信じる人間は少ない」
「あっ、確かに……」
「もし悪魔に関連する話をされたら、とにかく否定しろ。『悪魔なんていない』と」
「わかった」
「それから、あまり一人にしないほうがいい。向こうは一人暮らしか?」
「うん」
「……しばらくここに泊められないか」
「彩花が実家に戻るんじゃダメなの? そう遠くないと思うけど」
「お前がそばにいたほうがいい。いざとなれば俺か天馬を呼べる」
「わかったけど……どうしよう」

 私の家に泊めさせるとなると、彩花は私の家から職場に通うことになる。それほど遠いわけではないし、彼女の実家から通うよりは近いが、いろいろと不便だろう。数ヶ月前に越してきたばかりの彼女をこの家に呼び込むには、それなりの理由が必要だ。

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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://twitter.com/April_hrm  
作成日時:2022年9月11日 15時

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