【ブルーロック】彼氏が話を聞いてくれない【御影玲王】

一言も聞いてくれない ページ1

「A」


人も交通量も多く騒がしい街中で、いるはずの無い彼氏の声がはっきり聞こえ、私は振り向く。

紫色の髪、右側だけ短く切られた前髪、端正な顔、高い背丈──────見間違えるはずない、彼氏の、御影玲王だ。


「誰だよ······そいつ」


何故かフォーマルな服装をした玲王は、幼馴染の雄馬の方を少し睨むように見ながら、私に声をかけてきた。


「え、玲王······なんで、ここに」


玲王の質問に答えるより先に、そんなことを言ってしまう。玲王は私の言葉を聞くと、目を鋭くさせ、今度は私を睨むように見た。


「こんな時間に堂々と浮気かよ」


ゾッとするほど冷めた瞳に見据えられ、私は肩を揺らす。違うと言いたくても、声が出ない······人生初めての経験に戸惑い、隣の雄馬を見上げる。


「ハッ、ふざけんな」


雄馬も怒りを顕にした玲王に声が出せないらしく、少し開けた口を震わせている。無言は肯定を意味する──────恐怖で私たちが何も言えないと思っていない玲王は、黙っている私を「浮気者」と理解したらしく、呆れたように息をついた。


「はあ──────もういい、別れよう」

「ぇ······ま、待って！」


こちらに背を向けて歩き出す玲王に、咄嗟に声をかけるが、止まってはくれない。先程のような恐怖は薄れたため追いかけようと足を踏み出すが、間に通行人が入ってきたため、玲王に近づけない。


「玲王！誤解なの！」


玲王は一度も私の方を振り向くことなく、人混みの中に消えて行った。

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