＊２−１＊宴を待つは鼠か龍か＊ ページ4
薄暗い部屋に、其れは居た。
唯一の明かりを放つ機械を操作し、カタカタと電子音が響く其の部屋に。
床にはクシャクシャに丸められた紙屑や真新しい紙が散らばっており、机には甘くも苦くも無い冷えた珈琲が置いてあった。
「コレ、で…8400人、目…」
掠れた声で呟き、机にうつ伏せた其れは落ちる瞼を必死に開けてフラフラと立ち上がった。
散らばった書類を纏めると、其れは漸く薄暗い部屋から明かりの灯った廊下へと足を進めた。
明かりの中へ出てきた其れは漸く正体を現した。
6年前の龍頭抗争にてフョードルと共に居た女であった。
「…フョードル様。私です。開けますよ」
重々しい扉に声を掛け、返事を聞かずにそのまま足を踏み入れると、其処から香るのは疲れた体に染みる様な紅茶の香り。
だが、辺りは女の部屋同様薄暗く、明かりは電子器具の明かりだけであった。一つ違うとすれば、紙屑などは散らばっておらず、しっかりと床は見えていた。
そんな部屋へと入り、栄養と睡眠不足の身体に鞭を打ち、千鳥足で目的の人物の元へと駆け寄った女は、手に持っていた資料を差し出した。
「…フョードル様の予想通りなのは分かっていましたけど、読まれる側としては複雑です」
「貴女ならそう言うと思ってました。さぁ、茶菓子も用意したので休憩にしましょう。僕も病弱なので休憩しますね」
にこり、と良い笑顔でフョードルはそう言うと、パソコンが大数並ぶ机から離れ、出来立ての紅茶と茶菓子が並んだテーブルへと移動した。
女もそのテーブルへと移動すると、用意された椅子にそっと座り、紅茶を一口胃の中へ流し込んだ。
「！…あっぷるてぃー、ですか。それで、“あの人”からは何と？」
「“彼”は僕に踊ってもらう予定だそうです。彼は既にヨコハマに。太宰君が彼を招き入れた様です。僕と貴女の計画通りですよ。余興は多い方が良い…“彼ら”に踊らされているフリをして踊ってもらいましょう」
手を組み、くつくつと笑うフョードルに、女は再び視線を紅茶に向ける。
そして膝の上に乗る拳を握り、静かに問うた。
「何故あの日、あの人に教えてはいけなかったのでしょうか。私が居るのなら、あの人は…」
「言ったでしょう。余興は多い方が良い。彼と貴女を含めた多くの人に僕の予想通りに踊って貰いたいのですよ」
そうピシャリ、とフョードルは淡々と言い放った。
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フェミロ - まろりんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。只今、番外編&NG集等を作成中です。ご意見頂いた物語も書かせて頂きたいと思います。ありがとうございます。 (2018年4月29日 8時) (
レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)
まろりん - 泣きました( ；∀；)もし番外編の機会があったら死後、彼らの幸せな場面を見てみたいです。フョードルルートも。 (2018年4月14日 0時) (レス) id: 631d19327a (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - Rukaさん» そう言って頂けて嬉しいです。ありがとうございます。頑張ります。 (2018年3月29日 8時) (レス) id: a574a862fc (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - すごく感動しました!!!次の作品も頑張ってください!! (2018年3月26日 15時) (レス) id: aecad8101e (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - ご指摘ありがとうございます。外し忘れていましたので直しました。ありがとうございます。 (2018年3月15日 22時) (レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フェミロ | 作成日時：2018年3月15日 21時
