*18−1*因果の部屋* ページ30
骸砦の残骸に、ゆらりと人影が揺らめいた。
右側に編み込みをした艶のある黒髪に白い肌と蒼い瞳。
そして、純白のワンピースを着て白衣を羽織り、首から掛かるのは白の彼と同じモノ。
足元を彩るのは高くも低くもない黒のヒール。
片手には紅く甘い香りの果実を持った、其の女。
カモメが空を泳ぎ、太陽に照らされて深く青く輝く海を見て、女は残骸に座り、空を見上げた。
遠くから船の出港を知らせる汽笛が鳴る。
ヨコハマの街の中心部は今日も人で賑わっている。
辺りは静かで、遠くはなんとも騒がしい。
白衣のポケットから白い封筒を取り出すと、口元は優しい弧を描き、其れを空にかざす。
「拝啓、中島敦殿__」
囁く様にそう言った女は、残骸から離れて歩き出す。
右手に封を、左手に紅い、紅い、林檎を持って。
真実を知った女の行く末は決まってる。
騒がしい、ヨコハマの街のとある場所の、赤のポストに封を入れる。
誰にもぶつかる事なく、其の女は裏路地へと消えた。
「え、僕に手紙ですか?」
あの大事件から四日後。
白髪の少年はそう問うた。
孤児院育ちな為に誰かから手紙を貰う事など、一度も無かったからだ。
「差出人は不明か…気を付けて中身を確認するんだぞ」
「国木田君はやっぱりお母さんだね」
理想と書かれた手帳の角を、蓬髪頭に降り落とす。
痛い、痛いと笑いながら、今日も新たな自 殺法を考える青年はフと其の香りに視線を飛ばす。
手紙を貰った少年も気付いていたのか、ソレから香る甘い香りに疑問を浮かべる。
社員の一人である茶色の探偵帽を被った糸目の青年は、眼鏡をかけることなく淡々と言う。
「敦くーん、ちゃんと荷物を持って行くんだよ?その後の処理はこの僕に任せれば解決さ。だから帰りに林檎パイ買ってきてね!ハイ、行ってらっしゃーい!!」
「え?あっ、ちょ、乱歩さん!?」
背中を押されながら荷物を持たされ、職場から追い出された少年は戸惑いつつも封を切る。
手紙の内容を知った其の瞬間。
其の少年…白虎の少年は勢い良く走り出した。
目的地は___六年前の始まりの場所。
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フェミロ - まろりんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。只今、番外編&NG集等を作成中です。ご意見頂いた物語も書かせて頂きたいと思います。ありがとうございます。 (2018年4月29日 8時) (レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)
まろりん - 泣きました( ;∀;)もし番外編の機会があったら死後、彼らの幸せな場面を見てみたいです。フョードルルートも。 (2018年4月14日 0時) (レス) id: 631d19327a (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - Rukaさん» そう言って頂けて嬉しいです。ありがとうございます。頑張ります。 (2018年3月29日 8時) (レス) id: a574a862fc (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - すごく感動しました!!!次の作品も頑張ってください!! (2018年3月26日 15時) (レス) id: aecad8101e (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - ご指摘ありがとうございます。外し忘れていましたので直しました。ありがとうございます。 (2018年3月15日 22時) (レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェミロ | 作成日時:2018年3月15日 21時