敦芥『虫歯』 ページ5
◆
虫歯がれ。
♀♂
互いに伝わりにくい愛情表現をしていたが、嬉しいことに付き合うことになった。僕、中島敦は芥川龍之介という恋人が出来て幸せです。
出会った当時僕は恐怖しか覚えていなかった。けど意外に美人なんだな、結構繊細なんだな、と、新しい部分が見えるにつれて惹かれていった。
しかしそんな幸せな時間も、いつかは終わるんだなと僕は今実感している。
最近、芥川は僕とのキスを頑なに断るのだ。
最初は照れ隠しだと思っていた。けれど羅生門で防ぐとなれば本気で嫌がっている。
今も僕の部屋で二人きりなのだが、芥川は何も喋らない。本当に嫌われてしまったのだろうか。
「なぁ…芥川」
太宰さんに相談したら、相手は芥川君、何も聞かないで別れを告げてしまうと死ぬよ、と言われたので当たって砕けろ。僕は理由を聞くことにした。
「僕と最近、キスしないよな」
恐る恐る視線を芥川のほうへ向ける。彼は口を閉じてうつ向いていた。何も言わないので口も聞きたくないのかと思ってしまった。
「っ…芥川」
芥川に近づいて頬に手を添える。羅生門で抵抗しないという疑問があるが気にしなかった。
ゆっくり視線を上げた芥川と目が合う。そして僕は殴られるのを覚悟でキスをした。
ちゅ、と軽いリップ音を響かせ短いキスを終えた僕は芥川に聞く。
「僕とのキス、嫌いになったの?」
そう言えば芥川は唇を噛み締め首を横に降り、「あつしっ…!」と顔を歪めながら言った。
「今すぐ嗽(うがい)をしろっ」
え?と聞き返す前に芥川は僕の背中をぐいぐいと押し、洗面所まで連れてきた。訳も分からないまま僕は嗽をしたのだが、芥川は少し安心したような表情を浮かべた。
そして僕は思う。まさかとは思うけど…。
「もしかして芥川…虫歯あるの?」
芥川の肩が分かりやすく跳ねた。なるほど、そういう事だったのか。キスをすれば虫歯はうつるって言うもんね。
そんな事を気にしてこの可愛い可愛い芥川は…
「親不知が生えてきた上に虫歯になり…明後日には抜く故、待っていて欲しかった…」
顔を歪める芥川を見ると本当に痛いんだなぁと思った。僕は虫歯になったことなんて一度もないけど、芥川は生活習慣も可笑しいし無花果しか食べないからなぁ…
「分かった。明後日までは待っておく」
芥川の頭に手を乗せて撫で回す。そのまま頬に軽いキスをした。
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羅生門 - 体が痛む。 (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
kyo - 誰が見ても認める美貌の持ち主の芥川さんは、驚くほど食事の量が少ないので食べ残しは私が食べます。(きりっ) (2017年8月25日 10時) (レス) id: b8f51b6520 (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - マジカルワールドさん» 本当に申し訳ないです…!ありがとうございます! (2017年6月10日 23時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なかゞわとまと | 作成日時:2017年4月22日 1時