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敦芥『虫歯』 ページ5




 虫歯がれ。

♀♂


 互いに伝わりにくい愛情表現をしていたが、嬉しいことに付き合うことになった。僕、中島敦は芥川龍之介という恋人が出来て幸せです。


 出会った当時僕は恐怖しか覚えていなかった。けど意外に美人なんだな、結構繊細なんだな、と、新しい部分が見えるにつれて惹かれていった。


 しかしそんな幸せな時間も、いつかは終わるんだなと僕は今実感している。



 最近、芥川は僕とのキスを頑なに断るのだ。
 最初は照れ隠しだと思っていた。けれど羅生門で防ぐとなれば本気で嫌がっている。



 今も僕の部屋で二人きりなのだが、芥川は何も喋らない。本当に嫌われてしまったのだろうか。



「なぁ…芥川」



 太宰さんに相談したら、相手は芥川君、何も聞かないで別れを告げてしまうと死ぬよ、と言われたので当たって砕けろ。僕は理由を聞くことにした。



「僕と最近、キスしないよな」



 恐る恐る視線を芥川のほうへ向ける。彼は口を閉じてうつ向いていた。何も言わないので口も聞きたくないのかと思ってしまった。



「っ…芥川」



 芥川に近づいて頬に手を添える。羅生門で抵抗しないという疑問があるが気にしなかった。

 ゆっくり視線を上げた芥川と目が合う。そして僕は殴られるのを覚悟でキスをした。


 ちゅ、と軽いリップ音を響かせ短いキスを終えた僕は芥川に聞く。



「僕とのキス、嫌いになったの?」



 そう言えば芥川は唇を噛み締め首を横に降り、「あつしっ…!」と顔を歪めながら言った。



「今すぐ嗽(うがい)をしろっ」



 え?と聞き返す前に芥川は僕の背中をぐいぐいと押し、洗面所まで連れてきた。訳も分からないまま僕は嗽をしたのだが、芥川は少し安心したような表情を浮かべた。


 そして僕は思う。まさかとは思うけど…。



「もしかして芥川…虫歯あるの?」



 芥川の肩が分かりやすく跳ねた。なるほど、そういう事だったのか。キスをすれば虫歯はうつるって言うもんね。

 そんな事を気にしてこの可愛い可愛い芥川は…



「親不知が生えてきた上に虫歯になり…明後日には抜く故、待っていて欲しかった…」



 顔を歪める芥川を見ると本当に痛いんだなぁと思った。僕は虫歯になったことなんて一度もないけど、芥川は生活習慣も可笑しいし無花果しか食べないからなぁ…



「分かった。明後日までは待っておく」



 芥川の頭に手を乗せて撫で回す。そのまま頬に軽いキスをした。

芥川右固定噺『リス』→←続き。



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羅生門 - 体が痛む。 (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
kyo - 誰が見ても認める美貌の持ち主の芥川さんは、驚くほど食事の量が少ないので食べ残しは私が食べます。(きりっ) (2017年8月25日 10時) (レス) id: b8f51b6520 (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - マジカルワールドさん» 本当に申し訳ないです…!ありがとうございます! (2017年6月10日 23時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なかゞわとまと | 作成日時:2017年4月22日 1時

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