続き ページ38
◆
「そういえば、敦君」
ふと思い出したので聞いてみた。敦君なら知っているという根拠など無かったが、誰かに言いたかった。
「芥川君、最近忙しいみたいでね」
___構ってくれないんだ
其処まで言って敦君は眉をさげて、困ったように笑った。彼奴のことですから、何かまた独走癖が出ているんじゃないんですか、と。
でも私にはそれが偽りの仮面のように見え、言葉が出ない。敦君もやがて小さくため息をついた。
「敦君、何か隠してることでもあるの?」
「いえ…、その…」
彼が知っているなど思わなかった私は敦君の言う“芥川”の話を聞いた。
「…太宰さん、僕…これで二回目なんですけど」
_____芥川は、死んだんですよ
それじゃ、と言って敦君は其処からいなくなった。嗚呼…道理で。
__『太宰!気持ちは判るが…』
__『好きだったんだ』
__『でも会えないしなぁ…』
全部全部、私は知っていたのに忘れてしまっていたのか。国木田君の台詞も、敦君も、自分でうったメールさえ彼が死んだことを知らせていた。
今度は忘れてたまるか、また彼に会おうと思えば、頬に涙が伝う。最後の挨拶に彼にメールをおくった。
『好きだったんだ』……過去形でも諦め切れないこの言葉。
帰らぬということなど当たり前。また私からメールを送った。
返事はいつになっても来ない。
♀♂
誤字修正しました。
63人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
羅生門 - 体が痛む。 (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
kyo - 誰が見ても認める美貌の持ち主の芥川さんは、驚くほど食事の量が少ないので食べ残しは私が食べます。(きりっ) (2017年8月25日 10時) (レス) id: b8f51b6520 (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - マジカルワールドさん» 本当に申し訳ないです…!ありがとうございます! (2017年6月10日 23時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なかゞわとまと | 作成日時:2017年4月22日 1時