太芥『手袋』 ページ3
◆
ハッピーなんて何処にもない。
♀♂
太宰が組織を抜け、探偵社に入り、仕事をいつものようにサボっていたときのことである。国木田が“太宰!”と叫び書類で頭を叩きつけた。
「痛いなぁ…いきなり何をするんだい?国木田君」
「依頼だ。指名手配犯を捕まえろ、と」
国木田は最悪だと言わんばかりにその写真を太宰の目の前に差し出した。思わず太宰もそれには息を飲んだ。
「…これは?」
「ポートマフィアの芥川龍之介。詳しいことはまだ分かっていないが、そいつが異能者ということだけは確かだ」
ふぅん、この子も結構やるようになったんだね、と内心芥川を誉めつつ太宰は疑問を抱いた。はて、この子はこんな手袋をしていただろうか。私はそんなものを渡した覚えはない。
「よし分かった!その芥川君は私か捕まえよう!どうせ軍警で手も足も出なかったから私らに回ってきたのだろう?」
「あ、あぁ…だが太宰、そんな芥川を捕まえるなど如何やって…」
国木田の言葉もろくに聞かず、上機嫌な太宰はそのまま探偵社を出ていった。…が、内心は荒れ狂う嵐だった。
**
横浜の町を歩き始めて1時間が経とうとしていた。太宰は未だ芥川を見つけれずにいる。しかし太宰には確信があった。必ず私ならあの子を見つけられる。
「ごほっごほっ…」
ほら、この咳はあの子のものだ、と太宰は緩む頬に気づかず音のする方へと近づいて行った。
付いてみれば予想通り過ぎる、袋小路だったので思わず太宰は苦笑する。そして「やぁ」と声を掛ければ此方にも伝わって来そうな程に芥川の身体が跳ねた。
「ご無沙汰、随分と派手にやっているそうじゃないか」
「っ…ぁ…」
嗚呼、やはりこの子は手袋を付けている。
怯えた瞳はあの頃よりも増して見えた。さて、と太宰は本題へと入った。
「証拠の写真を見てね、思ったんだ」
すっと太宰の瞳から光が消える。あの時と同じような瞳でまだまだ小さい芥川を見下す。
「その手袋は何?」
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羅生門 - 体が痛む。 (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
kyo - 誰が見ても認める美貌の持ち主の芥川さんは、驚くほど食事の量が少ないので食べ残しは私が食べます。(きりっ) (2017年8月25日 10時) (レス) id: b8f51b6520 (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - マジカルワールドさん» 本当に申し訳ないです…!ありがとうございます! (2017年6月10日 23時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なかゞわとまと | 作成日時:2017年4月22日 1時