誰が見ても認める美貌の持ち主の芥川さんは、驚くほど食事の量が少ないので食べ残しはそこら辺の変人達が食べます。 (ページ9)

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太芥『本音』ページ9

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　自殺しようとする芥川さんを必死に止める太宰さん。読みにくい仕様になってるのはご了承ください。

♀♂

　その日、芥川は一日中落ち着いていない様子だった。話を聞き逃す、判断ミスなど、芥川にしては珍しい失敗があった。

　＿＿まさに、脱け殻のようだった。

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　夜の横浜を徘徊する凶悪犯罪組織、ポートマフィア。梟(ふくろう)も眠りにつく時間に彼らは仕事をする。芥川もそのはずだった。

「首領、芥川の様子は」

「うん、ただの栄養失調と不眠とストレスだから、まず寝てれば治るよ」

　中原は安心したようにため息を吐いた。芥川は今日も倒れた。今月倒れた回数は7回となる。

　その度に中原は芥川を叱りつけるのだが、最近の芥川は本当に脱け殻そのもので聞いているのかすら曖昧だった。

　＿＿医務室に無機質な音が響く。一定のリズムで刻まれるそれに芥川の意識ははっきりとしていった。

　完全に目が覚めたところで、芥川はどうとしない。ただ何処を見ても白いこの部屋の天井をただぼーっと見ていた。

　暫くして、芥川は重い鉛のような体を無理矢理起こした。もっと強くならなければ、と何度も呟きながら。

　不思議なことに、医務室の外の廊下にも、その先にもずっと構成員はいなかった。まるで外に出ても良いと言うようだ。

　芥川はいつもの外套を着て、本部から出た。本当に誰もいなかった。

「…」

　芥川は空を見つめた。星が綺麗だ。

　何処へ向かうのか決めていないのに足取りは早くて、前へ前へと進んでいる。

　そして着いたのは＿＿

**

「ンだとっ！？手前、見張ってたんじゃねェのかよ！」

「み、見張ってたんですがっ…まるで幽霊のようにすり抜けて行ってしまって…呼び声にも応えず…！」

「チッ…あの野郎…！」

　本部で中原が指揮をとっていた。首領も俄に焦っているように見える。

「これは参ったねぇ…。よし決めた」

**

　羨ましい、と一言呟いて芥川は目の前にある川を見た。どんな形でもいい。あの人に愛されたかった。

　この川をも羨ましいと思ってしまう。あの人の視界に入れることが羨ましい。笑いかけてもらっているのが羨ましい。

　芥川は川のすぐそばで膝を抱えた。