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「ヒバリ君、私最近悩みがあるのだけれど」
「へぇ、君に」
「なぁにそれ、私がいつも何も考えてないとでも思った？」
午後のお茶会。じめじめした梅雨の日である今日のおやつはカステラ。相変わらずおやつの時間は機嫌の良いヒバリ君を横目に、珍しいことに浮かんでしまった悩みについて、彼にぽつりぽつりと話し始めた。
「妙に視線を感じるのよ。何というか……私を探っているような。ストーカーか何かかしら」
思い返せば、この間──沢田くんとぶつかった後からだった。視線を感じるのは決まって登校する時や下校する時、私が一人でいる時だけだった。
ヒバリ君の攻撃を避けられる程には運動神経はあるけれど、攻撃手段を持っているわけじゃない。襲われたりなんてしたら、どうすればいいのかわからないの。
「全く、困っちゃうわ」
両腕を摩りつつ、カステラを一口頬張る。甘くてふわふわした味が口の中に広がって、それに私が目を細めている時。彼──ヒバリ君が口を開いた。
「じゃあ、今日は家まで送ってあげようか」
その時の私の顔ったら、驚きで目をまん丸にさせていたでしょうね。彼は私と目も合わせずそう言うと、最後の一切れを楊枝で刺して口元へ持っていった。
「……何」
「……いえ、貴方がそんなこと言うなんて思わなかったから」
彼のことを冷たい人だとは思っていないけれど、人に構う人ではないと思っていたから、まるで自分を気遣うかのような発言に驚いてしまった。
「嫌なの？なら一人で帰れば」
「……もう、嫌なんて言ってないじゃない。お願いするわ。貴方ほど頼もしい人は居ないもの」
並盛中最恐の風紀委員長サマ。彼の傍に居れば、とりあえず大丈夫、だなんて。他の生徒とは全く真逆であろう思想を頭の中で何度も何度も繰り返す。だって、最恐よ？頼もしい他ないじゃない。
その日、私たちは初めて二人で帰った。まだ残っていた生徒達がざわついて、彼がイラつくのを宥めるのは大変だったわ。お揃いの腕章、学ランとセーラー服。交わす会話はほんの少しだけだったけれど、彼の綺麗な横顔を見るのは楽しかったわ、なんて。
──今日もお願いね、なんておねだりしているうちに、それが当たり前になっちゃって。これからも下校する時は彼と一緒に帰ることになるんだけど。
( 「ヒバリ君、ヒバリ君！この間話したストーカーの件、全く気配がしなくなったわ！」 )
( 「……それは良かったね。」 )
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もも(プロフ) - まーぶりんさん» コメントありがとうございます。お褒め頂き光栄です。私自身気に入っていない部分が多い為近々大型修正が入るかと思いますが、それまで今の本作品を楽しんでいただけますと幸いです。 (2021年9月20日 6時) (
レス) id: f920ea46f5 (このIDを非表示/違反報告)
まーぶりん(プロフ) - 初めて読んだ感じの小説で，凄く面白かったです！続き楽しみにしています！更新頑張ってください！！ (2021年9月19日 17時) (レス) id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もも | 作成日時：2021年9月12日 15時
