俺が嫌だから。 ページ23
今日もそうだった。
隣に座るスーツ姿の彼。
自分の仕事がどうだこうだと私に向かって話をする。
それに加えて、政治だの社会情勢だの、
マンスプレイニングを始めるから、
「ちょっと、トイレ。」
嫌になって、席を立った。
疲れた顔が鏡に映る。
手を洗って、よれたメイクを直した。
「おかえり。ね、君はどこ住んでるの？」
「言いたくない。」
「ここから遠く？」
「うん、遠く。」
「じゃあさ、ホテル行かない？」
そう言って、彼は私の背中に腕を回した。
見慣れない彼の顔に、何故かジヨンを思い出した。
まだジヨンはテーブル席でオッパと飲んでるだろう。
だから、なに…？
今までなら、ついて行ってたでしょ？
なにを躊躇ってるの？
楽な関係が一番なんでしょ？
今更、断る理由なんてないでしょ？
私の心の声が、躊躇う私を導こうとする。
いいよ。
そう答えようと、口を開いた時、
「連れなんで、やめてもらえます？」
ジヨンが彼の手を私から退けて、鋭く彼を睨む。
ジヨンの効果は絶大で、彼は舌打ちだけ残して、
早足で、パブから出て行ってしまった。
そんな彼の背中を見送ったジヨンが、
「これもダメ。」
そう言って、タトゥーの入った綺麗な手で、
私のシャツの胸元のボタンを１つ閉じる。
空になった私の隣の席に腰を下ろすジヨン。
「俺の前では、ああいうのしないで。
あとのことは、とやかく言わないから。」
ジヨンが真剣な顔して、そう言う。
「…なに？軽蔑した？」
「軽蔑はしてないけど。」
「けど？」
「俺が嫌だから。
俺と飲む方が楽しいよ、絶対。」
そう言ってジヨンはバーテンダーを呼び、
二人分のドリンクを注文した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 175人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：carly
| 作成日時：2020年5月20日 21時
