花のように笑う貴方へ(yt*in) (ページ6)

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俺といのちゃんが一緒にいられるのは放課後のこの図書室にいる間の時間だけ。

図書室を出たらお互いの事はまったく知らない。

秘密の関係。

そんなふわっとした繋がりに不満は無くて、手を繋いだり、

たまにハグしたり、キスをした。

誰も来ない図書室の奥で人知れず触れ合いを繰り返す。

お互いに、相手に多くを望んでいる関係ではなかった。

いのちゃんは卒業が、

俺は転校が決まっていて、

いずれ離れてしまうことは頭の片隅で分かっていたから。

だから１日1日を甘く、楽しく、幸せにすごすのに必死で、

自分たちが目を向けるべき現実を見て見ぬふりをして、夢の中を過ごしていたんだと思う。

「ゆーと、キスしよう｣

「どうしたの改まって」

「いいから」

その日、俺といのちゃんはお別れのキスをした。

3日後にいのちゃんは卒業式を迎えて、

俺は明日転校する。

ふたりともさよならは、言わなかった。

「まってて」

「わかった」

そんな守れるかわからない口約束をして、

俺はいのちゃんにキスをしたのだ。