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店内を見渡せば、レンガと木を中心にコンクリートで作られた建物で、楽器がある程度まとめられて展示されていた。街中によくあるようなガチャガチャしたロック感ではなく、かなり雰囲気のいい、素敵なお店。真っ白なライトよりも、ほんの少し温かみのあるスポットライトが選ばれていて、楽器を柔らかく照らしている。
一通り眺めてカウンターに視線を動かすと、そこには人が三人。にこやかにレジ横に立つ、なんだか強そうな赤髪にハーフアップのお兄さん。カウンター内で仕切られた壁の向こうから顔を出す背の高い茶髪のお兄さん。ちょっと気だるげそうに肘をついてこちらを見る、ピンク髪の中性的なお兄さん。みんなして同じエプロンをつけているから、ここの店員さんであることは明白だった。
「えー、TRIADのスタッフの、あらきさんね」
「はい、あらきです。初めまして」
「あ、初めましてAです…」
唐突に始まる顔合わせに少し戸惑って父に助けを求めると、直ぐに説明が返ってくる。なんでも彼は両親の友人の弟さんだそうで、ここの関係性を掘り進めるとちょっと長くてめんどくさくてややこしいから省略するのだけれど、彼なら確実にいいものを用意してくれるから、とここのお店にお世話になることを決めたそうだった。うん、長い。
「えーっとですね、そこにぐでってるのはなるせサン、向こうでオイルまみれなのはめいちゃんですね」
「あ、はぁ…よろしくお願いします」
「よろしくー!」
「…よろしく」
「じゃあ、選びましょっか」
あらきさんに連れられ、店内のギターが並んでいるところへ向かう。目の前には左の方からジャズギター、アコースティックギター、ウッドベース。後ろにはエレキギターとエレキベース。その間にはアンプが積み上げられていた。その向こう側にはドラムが置いてある。
「どういう感じの探してますかね?」
「え、えと、えっと…」
「あっ初めてか、じゃあわっかんないですよね」
「はい、お恥ずかしながら…」
まだ入部して日があまり経っていないのもあり、何をどう選べばいいのかわからない。あちこち目移りしながら、つやつやと光るボディの眩しさにワクワクした。
「んー、どのパートですか?」
「Gt.Vo.です…」
「おっいいじゃないですか〜聞いた感じ通りやすい声してますもんね、ピッタリです」
緊張しっぱなしの私に、にこっと笑いかけてくれるあらきさん。社交辞令だと思うけれど、それでも嬉しくかった。
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作者名:あやめ | 作成日時:2022年10月9日 5時