No.27 ページ27
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A「記憶喪失?」
ノックス「思い出せない記憶があるってことだ。」
先生の言葉に、私はハッとした。
以前、感じた違和感。
自分の頭の中から記憶がすっぽりと抜けている感じ。
なるほど…記憶喪失なら合点がいく。
ノックス「見たところ、お前さんは何もかも忘れちまったわけではなさそうだな。」
A「え、ああ…なんていうか…はい…。たぶん、以前に自分が見たことがあるものとか…経験したことがあることとかは…ちゃんと覚えてるんです…」
ノックス「一部の記憶が抜けているといったところか。」
先生は冷静にゆっくりと私の記憶について分析してくれた。
まだ会って間もないというのに、この先生には何でもお見通しのように感じた。
先生のおかげで今の自分の状況に少し納得はしたものの、私はある疑問を先生にぶつけた。
A「あの…その記憶って、なんで思い出せないんですか?」
ノックス「さあな。ただ、考えられる理由としては精神的なものが多い。例えば、耐え難いショックが身に起きた、とかな。」
A「耐え難い…ショック…」
ノックス「自己防衛本能っていって、その苦しみから自分を守るために記憶を消すんだよ。」
A「それが……私の身に起きたってことですか?」
ノックス「あくまで可能性としてな。絶対だとは言い切れない。」
可能性…か…。
でも、私には心当たりがある…。
全てを忘れたわけではない。
『家族』という存在だけが思い出せない私の記憶。
私はギュッと目を瞑って、消された記憶を思い出そうと試みた。
ノックス「Aっていったか。」
不意に名前を呼ばれて、目を開けると、ノックス先生は難しい顔をしてこちらを見ていた。
A「は、はい…」
ノックス「人間っていうのは、馬鹿じゃない。お前さんの心が、魂が、もう駄目だと、赤信号を出したから、お前さん自身を守るために、記憶を消したんだ。お前さんは気になってその記憶を思い出したいかもしれんが、思い出さないほうがいいこともある。逆に、お前さんの心がもう大丈夫だと、受け止められると思った時に、記憶が思い出されることだってある。だから、今は気にしなくていい。」
相変わらずの仏頂面ではあったが、先生の言葉は優しく耳に届き、不思議と心が軽くなった。
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るるるs - 鋼の錬金術師AFじゃなくてFAですよ。 (2022年7月27日 0時) (レス) id: 7f6b75982b (このIDを非表示/違反報告)
篠懸 菖蒲(プロフ) - ポケットの案内人さん» ポケットの案内人さん コメントありがとうございます!そう言っていただけて私もすごく嬉しいです(><)更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2020年8月16日 8時) (レス) id: 21fdeed85c (このIDを非表示/違反報告)
ポケットの案内人(プロフ) - 私、ハガレン大好きなんですよ!夢小説書けないのに夢主勝手に想像したり、そしたらこの小説があったのでメッチャ嬉しいです!頑張ってください! (2020年8月15日 23時) (レス) id: 4ccf657d3b (このIDを非表示/違反報告)
篠懸 菖蒲(プロフ) - みーこさん» みーこさん ありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります(><) (2020年6月23日 10時) (レス) id: 21fdeed85c (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - 面白かったです!更新頑張ってくださいね! (2020年6月23日 10時) (レス) id: 19c92306d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菖蒲-アヤメ- | 作成日時:2020年6月12日 23時