No.26 ページ26
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表情を一切変えないノックス先生は、私には目もくれずグレイシアさんに言った。
ノックス「グレイシアさん、悪いが席を外してくれないか。目は覚めたが、もう一度診察しておきたいんでね。」
グレイシア「わかりました。じゃあ、よろしくお願いします。」
グレイシアさんはそう言うと、私に向かってこっそりと手を振って、部屋から出て行った。
A「ノックスさん、あの…助けてくださって、ありがとうございます。」
ノックス「礼なら彼女に言うんだな。」
冷たく言い放った彼の言葉に、私は内心ムッとした。
なんだか不愛想な人だ…。
ノックス先生は椅子から立ち上がると、黙って鞄から何やら道具を取り出し、その道具の一部を耳につけて、またその道具の先を私の胸にあてた。
A「これなんですか?」
ノックス「あ?なんだお前さん、病院行ったことないのか?」
A「病院?」
私が聞き返すと、先生は一瞬眉をひそめたが、そのまま黙って先ほどと同じように作業を続けた。
それから先生は、私の手首を掴んだり、目や口の中を観察したりと、私はされるがままだった。
一通りの作業が終わったのか、先生はベッド横の椅子に再び腰かけると、深いため息をついた。
しばしの沈黙の後、先生は口を開いた。
ノックス「グレイシアさんはな、たまにお前さんみたいな、どこの誰だかわかんねぇ奴を拾っては、俺に助けを求めて電話してくるんだ。」
優しいグレイシアさんのことだ。容易に想像がついた。
黙って話を聞く私に、彼は続けて言った。
ノックス「だが、こんな大層な怪我をしてきた患者はお前さんが初めてだよ。一体何があった。お前さん何者だ。」
何があったのか…
私は何者なのか…
双方とも非常に答えにくい問いだ。
A「前者の問いは………話すと長くなります。」
ノックス「後者は?」
彼の質問に私は言葉を詰まらせた。
A「………わかりません…自分が一体何なのか…」
私の言葉に、先生はじっと私を見据えて言った。
ノックス「………記憶喪失か?」
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るるるs - 鋼の錬金術師AFじゃなくてFAですよ。 (2022年7月27日 0時) (レス) id: 7f6b75982b (このIDを非表示/違反報告)
篠懸 菖蒲(プロフ) - ポケットの案内人さん» ポケットの案内人さん コメントありがとうございます!そう言っていただけて私もすごく嬉しいです(><)更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2020年8月16日 8時) (レス) id: 21fdeed85c (このIDを非表示/違反報告)
ポケットの案内人(プロフ) - 私、ハガレン大好きなんですよ!夢小説書けないのに夢主勝手に想像したり、そしたらこの小説があったのでメッチャ嬉しいです!頑張ってください! (2020年8月15日 23時) (レス) id: 4ccf657d3b (このIDを非表示/違反報告)
篠懸 菖蒲(プロフ) - みーこさん» みーこさん ありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります(><) (2020年6月23日 10時) (レス) id: 21fdeed85c (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - 面白かったです!更新頑張ってくださいね! (2020年6月23日 10時) (レス) id: 19c92306d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菖蒲-アヤメ- | 作成日時:2020年6月12日 23時