その五 ページ37
そう言えば百足はわずかに入り込んだ日の光を嫌がった。恐らく雲を纏わる理由もそれになる。なら答えは簡単だ。
「あいつの弱点は日光だ！ 雲からお天道様の下にひきずりだせば」
「なら雲からひきずりだす作戦を考えないとね」
どろろと沙世の言葉にさるは「おらぁにいい考えがある」と言う。
「やるぞさる!沙世姉ちゃん!百足退治だ!」
「うん!」
「ああ、姉ちゃんの弔い合戦だ！」
三人は手をガシッと組んだ。
「それでさる君考えってどんなの?」
沙世の問いにさるは「ああ、この辺りはくせぇだろ?」と説明し始める。
「確かに臭い!」
「きついよね」
どろろと沙世は頷く。
「実はその臭いが溜まっているところに火を近づけると爆発するんだぁ」
「ば、爆発するのかよ!?」
「そっか、その爆発で雲を吹き飛ばすんだね?」
どろろは驚き、沙世はさるは何をしたいのかを理解した。
「さらに爆発した火で燃やすんだぁ!良い考えだろ」
「ならあいつをおびき寄せる方法考えないとな」
「………ねえ、さる君。お願いがあるんだけど」
「「?」」
沙世は真剣な表情でさるにあることをお願いした。
＊
夜。作戦会議を終わらせた三人は明日に備えて寝ていた。
「う…う…」
(?)
「姉ちゃん…、姉ちゃんよ………」
さるは泣いていた。姉が目の前で丸のみにされたのだ。どうしても泣いてしまう。
(私もそうだったな)
『ぐす…錆兎兄さん…』
いつも鍛錬に付き合ってくれたり、色んな事を教えてくれた錆兎が死んでしまった。沙世は布団の中に入っても泣いていた。
『……沙世』
『義勇兄さん』
隣で寝ていたもう一人の兄弟子、義勇が心配そうに傍に来ていた。沙世の手を握りしめ、義勇は謝罪する。
『すまない。俺が弱かったばかりに』
『弱くない!義勇兄さんも錆兎兄さんも強いよ!』
沙世にとって錆兎も義勇も強いお兄さんなのだ。だから義勇の言葉を否定した。
『だが…』
『……じゃあ約束して』
『?』
その言葉に疑問符を浮かべる義勇。沙世は涙目だが真剣に言った。
『任務が終わったら帰ってきて』
『任務地が狭霧山の近くだったらな』
『ええ!?』
その言葉に衝撃を受ける沙世。そんな彼女の様子に義勇は頭を撫でてやりながら言った。
『とにかく狭霧山の近くだったらちゃんと帰って来る』
『鍛錬付き合ってくれる?』
『付きやってやる。俺は鮭大根作って欲しいな』
『うん!お腹いっぱいになるぐらい作るね!』
(義勇兄さん、約束破ってゴメンナサイ)
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作者名：AYAAYA | 作成日時：2019年2月24日 21時
