その三 ページ16
「そうかい耳がねえ…そいつは良かったじゃないか」
沙世とどろろは坊さんに先日耳を取り戻したことを教える。坊さんはまた体の一部を取り戻したことに喜んでいるがどろろは「よくなんかねえ」と不満げに言う。
「聞こえるようになったせいで、兄貴…弱くなっちまった」
「……うん」
どろろの言葉に同意する沙世。二人の言葉に「そうかい?」と坊さんは聞く。
「だって!坊さんでもあんな簡単にやっつけられる妖にこんなにやられちまってさあ」
「いつもなら瞬殺なのに」
「コイツはご挨拶だ♪」
とりあえず坊さんは百鬼丸の心配をする沙世とどろろに急場をしのいだことを言う
「本当なら薬がほしいところじゃあるんだが」
「おいらひとっ走り行ってこようか?川向うに大きな町があるはずだ!」
「どろろ!それだったら私が行くよ!足速いしね」
沙世が言うと坊さんに止められた。なんでも統治者・酒井が同盟国を裏切ったため、両軍が睨み合い。そのためいつ戦が起きてもおかしくないのだ。
「で、引き返してきたところにさっきの騒ぎってわけだ。」
「そ、そんな」
「くそ!武士ってのはなんでそんなに戦が好きなんだよ!!」
沙世は落ち込み、どろろは怒る。すると百鬼丸は耳を塞ぎ、ちぢこまった。それを見たどろろは口を抑える。坊さんは「傷が開いちまう」と注意するが百鬼丸は無視をした。
その様子は坊さん曰く穴蔵に閉じこもった手負いの獣だった。
「いいかい!?これは人の声だ!周りにあるのは森に生きてるモンや火や風の音さね お前さんは慣れなきゃいけないよ!穴蔵からこの世に出るためにはね!」
百鬼丸の手を取り、坊さんは強引に教える。しかし百鬼丸は嫌がった。
「怪我人なんだぞ!無理させんなって!兄貴はまだ仏さんになるわけにはいかねえんだからよ〜」
「百鬼丸兄さんをいじめないでください!」
焚火が消えていく。しょうがないから今夜はこのまま寝ることになった。
「なあ沙世姉ちゃん」
「ん?やっぱり百鬼丸兄さんの事?」
どろろが隣で横になっている沙世に小さい声で話しかける。
「兄貴、どうしたら嫌がらないんだろ」
「んー…きっかけでもあればね」
沙世の言葉にどろろは「きっかけかあ」と呟く。
〜翌朝〜
沙世の足の裏になにかが当たった。
「ん?あれ?お坊さん?」
「百鬼丸が向こうに行ったぞ」
「え!?ケガしてるのにですか!?どろろ!起きて!兄さん勝手に向こう行っちゃったって!」
「んあ!?」
三人は百鬼丸が行った方向へ行くことになった
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作者名:AYAAYA | 作成日時:2019年2月24日 21時