05. あの人と:田中龍之介 ページ5
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「A、テーピング巻いてくれ」
「人様への頼み方がなってない、却下」
「ぐっ…テーピングを巻いて下さい、お願いします」
「ふむ、よろしい。座りたまえ」
ドカッと座り込んで足を伸ばす龍に「どこが痛む?」と聞けば「ふくらはぎ」と返ってきたので、どれどれ…と痛みを刺激しないよう優しくペタペタ触る。
(ん〜、ちょっと筋肉が張ってるかな?)
「ちゃんとストレッチした?」と上目がちに尋ねれば、なぜかボッと顔を赤らめている龍と絡む視線に時空の流れが止まる。
「え、ちょ…何その顔」
「お、お前がベタベタべたべた触るからだろーが!」
「龍が痛いって言うからじゃん!」
「目でおかされた気分…」と呟いたタイミングで潔子さんが現れ、私たちを交互に見たのち、すこぶる冷めた目で龍を見ては去って行った。
「潔子さんに軽蔑された…」
「キッカケは何であれ、潔子さんの視界に入れてあげたことに感謝してほしいわ」
「っ!それもそうだな!」
秒で復活したアホに苦笑いしつつ、ビビーとテーピングを伸ばしふくらはぎを囲むようにして処置をし終えたところで「あ、そうだ」と話を振る。
「この前久しぶりに叶歌から連絡きてさ」
「おぉ〜懐かしいな」
龍と叶歌は同じ小学校、私は違う所に通っていたが地域のバレーボール教室で顔を合わせるようになり、学年も同じ、家も近所だったことから仲良くなった。
叶歌は新山女子という県内有数の強豪校に進み、専門誌でも『期待のニューヒロイン』と紹介されるほどで自慢の幼馴染みだ。
「練習は大変だけど元気にしてるって。でね、龍ちゃん元気?って聞かれたから…」
「聞かれたから?」
「退学になったって言っといた」
「うぉおい!!この顔面詐偽!」
いつぞやも言われたこの台詞。
何で知ってたの?ってずっと疑問だった点がスーっと頭の中で1本の線に繋がる。
「それツッキーに教えたの龍でしょ!?」
「事実じゃねーか」
「それが初恋の相手に対して言う言葉!?」
「捏造してんじゃねーよ!!」
ギャースギャース争う私たちを横目に「と、止めなくて大丈夫ですか?」とオロオロする1年生に対し、見慣れている人たちは口を揃えて言う。
「大丈夫大丈夫。あれ、アイツらのコミュニケーションだから」
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『なんやかんやで仲良し』
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「この前家でお前の名前出したら姉ちゃんが会いたがってたぞ」
「冴子ちゃん!私も会いたーい!今度行くわ!」
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作者名:華うさ | 作成日時:2024年3月2日 15時