30章:幻聴 ページ30
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蔵沢「はい、あ〜ん」
御幸「‥いいって自分で食えるから」
蔵沢「風邪の時ぐらい甘えていいんだよ?」
御幸「見返りの方がこえーもん」
蔵沢「口に熱々のお粥ぶっ込むよ?」
マジで照れるこの状況から、冗談を交えながら逃げようとするも、蔵沢に諦める気はないらしく
目の前でうりうりと揺れるレンゲに、結局は根負けしてパクッと口に含む。
蔵沢「熱くなかった?」
御幸「‥へーき」
その返事に「よしよし」と嬉しそうに、マスクを顎まで下げて二口目をフーフーし始める。
結果的に全部食べさせてもらうハメになり、空になった土鍋を満足気に見つめる蔵沢を横目に、食後の薬を水で流し込んだ。
蔵沢「身体温まってる内に、布団入った方がいいよ?」
御幸「はいはい、おかーさん」
蔵沢「‥お父さんは誰のつもり?」
御幸「そこじゃねーだろ」
さっき食べたお粥で多少なり体力が戻ったのか、くだらない会話をしながらベッドに身体を沈める。
蔵沢「あっコレ、来る途中に買ってきたんだけど‥」
そう言ってカバンの中から、ポカリとゼリーを取り出しては机の上に並べる。
御幸「‥サンキュ。色々わりーな」
蔵沢「これぐらいどってことないよ!」
‥俺がベッドで寝てて、枕元には蔵沢がいて‥何か変なカンジ。
これで俺が元気だったらヤバかったな‥とか、冗談まで考えられる様になった身体は、薬の副作用か一気に眠気が強くなる。
御幸「なぁ‥蔵沢」
蔵沢「ん?欲しい物があったら言ってよ」
今なら‥逆に今しか聞けないような気がする
御幸「お前って‥好きな奴いんの?」
蔵沢「‥えっ‥」
俺からの唐突な質問に、目をぱちくりさせながら「な、何で?」と疑問系で返してくる蔵沢に言葉を続ける。
御幸「俺は言ってんのに、そーいや蔵沢のことは聞いてなかったなーと思って」
蔵沢「み、御幸のことを知ったのは事故で‥!」
御幸「でも知ってんじゃん。で、いるの?いねーの?」
蔵沢「‥‥いる、けど‥‥」
自分で聞いておきながら、耳まで真っ赤な顔を見て予想はしてたもののズキッと胸が痛む。
最大限の平静を装いながら、次の質問を投げ掛けるも、肝心な所でゆっくりと瞼が閉じだす。
御幸「‥だ、れ‥?」
蔵沢「‥‥‥」
御幸「‥‥言え‥‥ょ‥‥」
__御幸だよ‥
現実か夢かも分からないほど、フワフワした意識の中、すげー都合のいい答えが返ってきた様な気がした。
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作者名:華うさ | 作成日時:2016年5月20日 22時