不器用な彼に恋した私。Ⅴ (ページ43)

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230．大好きが伝わらない。ページ43

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翔「ふーん…喜ばしいね
今後の会社の発展に尽力してくれそうだな」

青信号、再び車が走り出す。
私は、徐に翔君に視線を向ける。
いつもより険しい雰囲気を感じなくもない、表情。

A「あれは、違うの…」
私は弁解したくて、口を開いた。

翔「花宮君だっけ？
彼の計画書は好きだな、新しい発想であふれてて。」
さっきからずっと仕事の話だ。

A「私、“剛君”に対してなんにも…」
私が口を開いて振り絞って声を出した瞬間

翔「“剛君”…ねぇ…」
A「こ、これは緊張を解くためで、敬語もやめてくれって言ったの」

極めて厳しい声で
翔「近すぎるんじゃない？ただの後輩だろ
しかもまだ採用確実ではないインターン生」

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急に冷静になってみれば、敬語なしなんて社会人としてどうなんだろうって思わなくもない。
だけど、私がインターンで来た時に、不安で仕方なかったのにもかかわらず、相談できにくい環境だったのを思い出して、私が教育係だったらこんな思いをさせまいと思う一心で…

“敬語じゃなくていいよ、私そんな敬語使われるほど出来る先輩じゃないし
私が緊張するから、敬語は使わなくていいよ
勿論わかってるとは思うけど、私以外の先輩には敬語は使ってね”

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確実に今私、教育係失格の烙印押されちゃってる

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急に目頭から涙が浮かび上がってきた。

確実に嫌われた。

翔「大体、まだ花宮君ならわかるけど、剛君は近すぎるだろ。
二人、同じ苗字とかじゃないんだから」

A「ご、ごめんなさい」
涙声がばれたら、確実に嫌われる。
翔君は仕事に女も男もないのだ、女の武器を使うなんて最も嫌いそうな事。

翔「明日、課内実習なんだろ
二人がAのこと、なれなれしくしてたら、倫理的にどうなんだって言われそうだな」
そんなことまで考えが回らなかった。
私は学生目線でしか考えれてなかったのだ。
企業目線で考えなければいけないのに。
教育係が、学生の企業のイメージになっていくっていうのに。

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私は思わず嗚咽がこぼれる。
ばちっと、視線が合って、戸惑いの色を浮かべる瞳が射抜いてくる。

A「うぅっ…ご、ごめん…なざい…」

静かな車内。
あきれかえったのだろう、翔君のため息が聞こえてくる。
私の住むマンションの下で止まった車。

私は、涙を堪えることが出来ず決壊した目を擦って、シートベルトを外して
言葉を交わすことなく、車から出て行った。