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内容も覚えられないようなくだらない話をした。
五条さんはお話上手な方で、学生時代の建人さんのお話を沢山してくれた。
建人さん自身はとても嫌そうな顔をしていたけれど、これといって止めることも無い。
……いや、たまに五条さんの話を遮っていたけれど、でも恐らくそれは本当に聞かれたくないことなので、私も特には掘り下げたりしなかった。
それからというもの、五条さんはよく遊びに来ては私にこっそりと建人さんのことを教えてくれるようになった。
建人さんのことは建人さん本人から聞きたいものだが、彼は話さないことも多いのである。
ましてや自分がヘマをした話だなんてとんでもない。
からかわれていた後輩の時分を話してなんてくれないので、私は五条さんの話してくれる出来事の数々が面白くて仕方なかった。
それと、毎回話の最中に帰ってきては、むくれて拗ねてしまう建人さんの反応が可愛かったという理由もあったのだが。
帰ってきて五条さんがいると認識するや否や、荷物を置いてソファーに座る私の隣を陣取る建人さんには、ニヤける頬を抑えるのに苦労させられた。
その様子を散々からかってようやく席を立つ五条さんも、建人さんのむくれ顔を楽しみにしているらしい。
仲が良くて何よりだと思う。
これからも建人さんをよろしくお願いしますね、と五条さんとの会話はそれで締めくくられる。
任せなさいと親指を立てる彼の背中は、一般人の私でさえ頼りになると感じていた。
五条さんがくぐった扉が閉まる。
締まりきった途端に溜息をつき、建人さんはその手に置いていた本をパタリと閉じた。
「……今日は何を聞いたんですか」
「建人さんとの初めての合同任務のお話ですよ」
「あぁ……あの2級呪霊の」
「息が上がって伸びちゃったって」
「少し盛ってますね。息は上がっていましたが伸びてはいません」
「ふふふ、じゃあそういうことにしておきましょうか」
「……信じていませんね?」
「まさか!」
唇をへの字に曲げる彼。
まるで面白くないとでも言いたげだ。
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黒猫25 - ただただ感動しました。七海さん、推しなのでとても嬉しいです!ありがとうございます (2022年4月19日 22時) (レス) @page47 id: 270b34836a (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 六花さん» コメントありがとうございます…!七海さんらしい、という言葉が何よりも嬉しいものでございます。夫婦は似るもの、という言葉に倣ったエンドにしたかったのです。ハッピーエンドと感じていただけたのなら光栄でございます。本当に、ありがとうございます! (2021年4月15日 8時) (レス) id: 6d2f9f581f (このIDを非表示/違反報告)
六花 - やっと七海さんらしい夢小説に出会えました。悲しくてさみしくて読みながら泣きました。終わり方もとてもよかったです。旧住まいに戻りそこから未来が続いていくと感じられたところが特に。最後の電話のやり取りなんて堪らないです。ハッピーエンドだと感じました。 (2021年4月13日 18時) (レス) id: 001585b729 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - マリイさん» あなた様の解釈に一致していれば幸いでございます。通りすがりにでも一読していただき、誠に有難うございました。 (2021年3月7日 18時) (レス) id: 6d2f9f581f (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 建人は私の夫 建人の方からプロポーズして来た建人は私が居ないと私に愛されてないと建人死んじゃう建人は私には超過保護 (2021年3月7日 11時) (レス) id: 421640d4d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タロ。 | 作成日時:2021年1月28日 2時