緑盤の箱。【 森鴎外 】

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息苦しい、死に、そう。

酸素を受け入れる事を拒否させる首領の表情は少なくとも狂喜に満ちた人間の表情だったと言う事は頭の中から中々離れてくれない。







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「…ん、あっ」







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接物とはこんな簡単に奪われるのか。

好意を微塵も示さない人間に無理矢理された接物は如何な気持ちなのかなら今体験している。憎悪と嫌悪だけが感情に募られるのをただ黙って従っているのだ。それが無理矢理接物をされた側の人間が言える言葉なのだろうか。ならば愛する人間に接物をされる気持ちは如何なだろう？きっと嬉しいのだろうと予測してしまう。こんな抱き締められても深く舌を絡み合わせ、酸素を分け合いながらされても愛する人間にされたらそれは幸福なのだろう。理解している。それと間逆なんだって。ちゃんと理解しているけど、けれど、







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「…ふ、あッ」







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大嫌いな人間にこんな力強く抱き締められる気持ちは余程体験する事はないだろう。痛くて苦しいし、何処かに逃げ込みたくなる。生きてはいけないと死にたくなる程度に追い詰められる。身体中縛り付けられた感覚になっては更に縛り付けられて。

銀色の糸を垂らす。激しい息を吐きながら。







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「うふふ、泣かないでくれ。

私はこれ程にも君を愛しているのだ。君を誰の手にも触れさせないし誰の手にも置かない。ただ私だけを見ていればいい、君の情景にあるのは誰の人間でもない、私だ。」






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意識が、







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「本当に愛狂おしいよ、Aちゃん。」







遠くに。

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