2章 『ツバサ』の人 ページ10
Noside
越した先は、壁探索隊には見慣れたかなりマリア付近の場所。
付近には巨大な樹木で成り立つ森があり、探索隊が活動しやすい場所。
初めての壁の中。人々は恐る恐る辺りを見回していた。
｢この壁付近には、誰も来ない。何かあれば、穴から逃げよう。大丈夫だ｡｣
キルサの指示で、村人は少し安心した。
｢...各々荷物を広げていい。側には巨人の気配もない｡｣
今度はAの言葉。こちらも凛とした副官の言葉だ。
＊＊＊
｢さて。A、サン。これからどうしようか？｣
｢いや、え？えっと？｣
｢...ご自分で、壁の中に入ると言ったのに。何か考えがあったのではないのですか？｣
呼ばれたと思ったらこれだ。ハハハと笑うキルサは、本当にしっかりしてるのか、ダメ人間なのか分からない。
｢...目的はあるが、なかなか難しいだろうからさ｡｣
｢目的、とは？｣
とりあえず、しっかりしていることにしようと考えながら、Aは聞いた。
｢ほら。『ツバサ』の奴らについて、考えないとだろ？｣
｢なるほど｡｣
サンがポツリと呟いた。キルサは今度こそ真剣にAを見つめる。
｢壁の中に入ったし。もしかしたら、遭遇するかもしれない｡｣
｢まぁ、そうですね｡｣
『ツバサ』とは、壁探索隊が知る限り唯一ローゼを出る一団。
当然顔を合わせたことはないが、奴らが通ったあとを見れば、食い散らされた体が落ちている事がある。
そこには、血に染まったマント等があり。その紋章が二つ組み合わせた『翼』だった。
だから、ツバサと呼ぶ。
｢...私が『覚えている』限りならば｡｣
記憶を辿る。金の瞳が一瞬揺れ、ふと顔を上げた。
｢『ツバサ』は...調査兵団、と呼ばれていました｡｣
｢調査兵団？｣
おうむ返しに聞き返し、Aが頷いたのを見て、サンが手帳に書き留めた。
｢唯一、壁の外に出る一団で間違いないです。...推測ですが、今はこの一番外の壁奪還が目的では？｣
｢それで、か。ありがとうな、A｡｣
｢...はい｡｣
｢A...お前は、帰っていい｡｣
顔色が悪い、と。さりげなく気を使われて、Aは僅かに笑みを浮かべた。
退散する背中を見送って。
｢Aさんは大丈夫ですかね？｣
サンにキルサは答える。
｢過去の話だ、仕方ない。...思い出したくないだろうさ｡｣
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ミラージュミラー - まだ、読んでくださっている方ありがとうございます。そろそろ更新再開したいです... (2020年11月4日 16時) (
レス) id: 1bda2ccaaa (このIDを非表示/違反報告)
ミラージュミラー - すみません、暫く更新遅くなりそうです。( ノД`)… (2020年4月19日 14時) (レス) id: 1bda2ccaaa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミラージュミラー | 作成日時：2020年4月12日 14時
