能力 185 ページ36
.
山をのぼり、高い場所に建つその建物の中。
一人の男が机に向かい墨をつけた小筆でさらさらと綺麗な字で紙に何かを書いている。
しかし男は途中で書くのを止めると、筆を置き和紙をゆっくりと持ち上げ、そのままぐしゃりと握りつぶした。
｢駄目だ、また失敗した｣
そう小さく呟き顔を歪める。
すると、部屋の外からまた別の男の声がした
｢優、食事にしないか？もう長いこと何も口にしてなじゃないか、何か腹に入れないと物足りないだろ？｣
｢別にいらないよ。何も食べないからって死ぬ訳でもないし、時間の無駄。｣
心配する声とは反対に、優と呼ばれた男は怒りが滲む声で冷たくそう返した。それを聞いて外に居た沼井は眉を下げる。
もう何日も部屋に籠り、何やら術道具を作っている様だが、その内容は本人以外誰も知らない。
沼井は手に持ったお盆に置かれたふたつの握り飯と緑茶をチラリと見て、ひとつため息をつき、せめてもの思いで部屋の入口前に置いた。
｢握り飯、ここ置いとくから食べろよ！｣
そう呼び掛けるも返事はない。
優……元いこの戸美神社の神様である大将優は最近ずっとこの調子だった。
確かに人間ではないから何も食べずとも死にはしない。だが、彼らだって人と同様空腹は感じる。
大将はもう一週間は何も食べていない、あのなんとも言えない虚無を感じているはずなのに、何が彼をそこまで行動させるのだろうか？
｢はぁ………どうしたものかな……｣
この神社に使える蛇の一人である沼井はため息混じりに呟いて、その場をあとにした。
その様子を物陰から見つめる一匹の蛇が、チロリと舌を出す。
するとその蛇は一瞬で蛇から人の姿へ変じた。特徴的な髪型とは反対に、細く眠そうな眼の奥には確かな光が爛々と見える。
｢…………あと4人｣
そう呟いた声はとても落ち着いて、淡々としていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 713人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空閑(プロフ) - 面白すぎていっきに読んじゃいました！続き楽しみにしてます (2020年9月28日 5時) (
レス) id: 3bb5fe966c (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか？ - 久し振りの更新!!!!ありがとうございます!!!!面白い！続き気になる！それ故語彙力無くなる！すんません！更新頑張ってください！次も待ってます！ (2020年9月23日 20時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
KIKU(プロフ) - 好きなジャンルのものが続いてると嬉しいです！次も待ってます！ (2020年9月7日 0時) (レス) id: 7c9d0c9043 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか？ - うおーー！久し振りの更新ありがとうございます!!!!何ゆえ3人は襲われとるんや!?しかもヤバそう!?すっごく続き気になります！無理せん程度に頑張って下さい！楽しみに待ってます!! (2020年9月6日 20時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
冬桜(プロフ) - 今まで読んできたハイキューの小説の中で一番面白いです！更新頑張ってください！！ (2020年8月31日 22時) (レス) id: e2ae2aafdb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
