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能力 171 ページ22

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「……………はい?」


たっぷりと間をあけてAは気の抜けた声をもらす。そして今一度、言葉の意味を理解して心の底から驚いた。



「おばあちゃんの………知り合い?あなたが?」

「あぁ、もう何十年と昔からのな。お前は千代の孫なんか?」


北は昔を思い出しているのか、ゆっくりと目を伏せる。そして私にそう質問した。


「はい……そうなりますね。」


私の答えを聞いて北はまた何か聞こうと口を開く。その様子を見て私は嫌な予感がした。しかし、私は彼にこの事を伝えなければならないのだ。


「………それで、千代はまだ……元気か?」

「…………。」


やはり、北の口から出たのは思っていたのと同じ言葉だった。私は思わず口を噤む。

北も私の様子を見て何か察したのだろう。眉にシワを寄せる。しかし私の口から聞くまでは、ちゃんと黙っているつもりらしい。

私は彼の覚悟を感じ、意を決して口を開く。



「………祖母は、三年前に亡くなりました」


「………………ほうか」



二人の間に流れる空気はあまりにも静かだった。
しかし、その静寂を破ったのは北だった



「………失礼やと思うが、原因を聞いてもええか?」

「………老衰死です。83歳の誕生日の次の日に…」


私も何も隠さずちゃんと答えた。
彼にはそれを知る権利があるのだから。


「………老衰……か」

「はい。食も細くなって寝たきりになって……亡くなる直前は目に見えて元気が無くて………でも、最後の最後は幸せそうに笑っていました。」

「………ははっ、アイツらしい」

「……「最後くらい、笑って居たいでしょ?」って、言いながら。恥ずかしながら、私はボロボロ泣いてましたけど……」

「そうなんか………」


そこまで言ってAは力なく笑う。それを見て北も僅かに頬を上げるも、目はとても寂しそうに揺れていた。




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空閑(プロフ) - 面白すぎていっきに読んじゃいました!続き楽しみにしてます (2020年9月28日 5時) (レス) id: 3bb5fe966c (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか? - 久し振りの更新!!!!ありがとうございます!!!!面白い!続き気になる!それ故語彙力無くなる!すんません!更新頑張ってください!次も待ってます! (2020年9月23日 20時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
KIKU(プロフ) - 好きなジャンルのものが続いてると嬉しいです!次も待ってます! (2020年9月7日 0時) (レス) id: 7c9d0c9043 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか? - うおーー!久し振りの更新ありがとうございます!!!!何ゆえ3人は襲われとるんや!?しかもヤバそう!?すっごく続き気になります!無理せん程度に頑張って下さい!楽しみに待ってます!! (2020年9月6日 20時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
冬桜(プロフ) - 今まで読んできたハイキューの小説の中で一番面白いです!更新頑張ってください!! (2020年8月31日 22時) (レス) id: e2ae2aafdb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘納豆 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2020年4月29日 20時

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