夏休みは休むもんじゃない ページ14
宏くんside
オレ一人より、Aがいた方が全然早く
すりすら進んで。
なんか、いい匂いが漂ってきたと思ったら
クッキーなんて焼いてくれてた。
あんまり甘いのは好きじゃないけど、Aが
作ってくれたんだ。
ちゃんとオレのことわかってくれていたらしく、
甘さ控えめのビター味にしてくれてた。
うまいし。
美味しいし。
幸せだよ〜？
でも、今日だけだから。
あんまり幸せを噛みしめると、またほしく
なっちゃうから。
そんなに、ドブドブ幸せに浸っちゃダメだ。
A「夜ごはんできたよぉ〜」
お！
夜ごはん♩
宏「なに？夜ごはん」
さっきからいい匂いは感じてたけど…
A「お味噌汁に〜、サラダに〜、白米に〜、
豚丼♩」
オレの好きなものパラダイス…！！
さっすがA！
宏「いたっきゃ〜すっ！！」
テンション上がりまくり！
A「どーぞっ！召し上がれ♩」
パク。
…
…
うんめえ！！！！！
やっぱり、Aの飯が一番うめえな。
カンドーして泣きそうだけど、Aの手前
そんなことできない。
パクパクパクパクパクパクパクパク！
食べる手が止まらなくて、どんどん減ってく
料理。
宏「ごっ…そーさんっ！！」
A「お粗末様でした」
心地いい。
いつぶりだ？
Aのお粗末様でしたって。
ニコニコして、いっつも言ってくれた。
もっかい、取り戻したいあの時。
オレだけが、Aの特別だったんだ。
隣に…もっと近くにいたい。
宏「…サンキュ」
この、たった一回の食事にこんなありがたみを
覚えるなんて、びっくり。
A「うん…じゃ、またね？」
宏「……おぅ。またな」
荷物をまとめ、去っていく後ろ姿。
玄関まで、見送りに来た。
サッカーやら、遊びやらあっけど…
高校一年の夏休みなんて、あっとゆーまなんだな。
特に、なにもなかったし。
A「ありがと、またね」
ホントに、なにもないと思ってた。
Aの髪が揺れる。
生暖かい風
一瞬
宏「ちょっ」
A「はへっ？」
抱き寄せ、また一瞬で離す。
宏「じゃ」
それだけ。
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作者名：苺パンダ | 作成日時：2019年1月3日 23時
