黎明の手記 (ページ13)

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空、或いは色。ページ13

【黄昏】
薄暗くなった夕方。夕暮れ。夕焼け。比喩的に、盛りを過ぎ勢いが衰えるころの意にも使う。

｢なるほど分からん｣

そう言いながら辞書を閉じるルシファー。

｢何がだい？｣

｢お前がこの色を好む理由が、だ｣

｢綺麗じゃないか｣

その隣で欠伸をし、島の崖っぷちから足を放り出しているのが私。そう、諸君の大好きな私さ。

｢すまん、言い換える。空を綺麗だと思う感性が理解できん｣

｢あらそう……それは残念な。ねぇルシファー、今度の実験は、空の色を題材にした何かにしないかい？｣

｢話を聞け｣

辞書の背で、コツンと軽く叩かれる。

これは自惚れなのだが、彼は私に甘いと思う。
今のが他の存在なら、きっと容赦なく辞書の角でぶん殴っていただろうから。

｢空の何を綺麗だと思うんだ？｣

｢色だね｣

｢色か。何だ、赤が好きなのか？｣

｢赤に限らず、全て好きだよ｣

赤も青も紫も。
そもそも〝色が移り変わる〟と言う出来事が美しい。ごく稀にピンクや金、銀色、灰色になるのもだ。
特定の条件が揃えば緑にもなる。

そんな話を彼にする間、ルシファーは黙って私の事を見ていた。

彼が黙って話を聞くのも、多分だが私ぐらいだ。大体｢くだらん｣と一蹴する事が多い。