佰弐拾陸 ページ26
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『ただいま帰ったよ』
「あっ、A様、おかえりなさい!」
「おかえりなさ…あれ、なぜ着流しなのです?」
『任務先で隊服を海水で濡らしてしまってね』
「あら、でしたら洗濯するので隊服をお貸しください」
『ふふっ、大丈夫だよ、こういうのは自分でしないとだからね。どうもありがとう』
「いっ、いえっ!こちらこそ!」
『(こちらこそ…?)』
屋敷の門の前にいた隊士と会話をしてから玄関へ足を踏み入れる。
刀を自室に置いて服を着替えた後、隊服を洗うため水道のある庭へと向かった。
……ん?あれは……
『有一郎くん無一郎くん、そんな所に座りこんで一体何をしているんだい?
…………おや…?』
じっと地面にしゃがむ双子の視線の先には、黒く細長い線が。
蟻の行列だった。
無「…あ、A……帰ってたんだ、おかえり」
『うん、ただいま。二人で蟻を観察していたのかい』
有「おかえり。無一郎がずっとこれ見てるのを見つけて、暇だったから俺も一緒に眺めてたんだ」
『ふふっ、そうか、それは邪魔をしてすまなかったね。暑くなってきたから、水分はこまめに摂るんだよ』
無「は〜い」
また無言で行列を見つめ始めた二人のもとを離れ、近くの水場へ向かう。
じゃばじゃばと桶に入れた冷たい水で隊服を洗いながら、たまに双子を横目で見る。
有「…………」
無「……………………」
『(すごい…さっきから全く動いてない……)』
微動だにしない。どんだけ集中してるんだ。
『(なんか微笑ましいな〜……
…あっ、組紐も洗わないと……)』
緩く髪を結っていた組紐を解く。
ゆるりと髪が前に垂れて、お面に張り付いた。
濡れたままの指で髪をすくって耳にかける。
『(あ〜、なんか、夏が始まる、…って感じだなぁ)』
煌めく水面に涼しさを感じる。もうそんな季節になったか。
そんなこんなで隊服も組紐も綺麗になった時、静かな足音がこちらへ近づくのが聞こえてきた。
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MARE(プロフ) - 海の中で目開けでも染みませんよ。普通の水と同じです(体験談) (2021年6月26日 20時) (レス) id: 7446762651 (このIDを非表示/違反報告)
かん - お久しぶりでございます…!楽しみにしてました。これからも楽しみに待っております! (2020年6月7日 16時) (レス) id: b9832c7634 (このIDを非表示/違反報告)
翔(プロフ) - すごいハマってます。小芭内かわいいです/笋靴砲呂燭泙蠅泙擦鵝そしてむいくんの可愛さも尊い 小芭内が一時期愈史朗くんに近かったのが笑いました。これからも楽しみにしております。(^-^) (2020年6月3日 2時) (携帯から) (レス) id: b9fae3d1e9 (このIDを非表示/違反報告)
shion - 久しぶりの投稿嬉しいです!!続きも楽しみにしてますっ! (2020年6月2日 1時) (レス) id: bbadf961a9 (このIDを非表示/違反報告)
紅蓮(プロフ) - めっちゃハマりました!!続きが読みたいです!更新頑張ってくさい! (2020年5月26日 22時) (レス) id: d6f1919e89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M2 | 作成日時:2020年1月31日 20時