玖拾 ページ40
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伊黒小芭内side
『…ごめんね、小芭内』
目の前で正座した姉様が、俺を見上げる。
伊「………………(可愛い…)」
とんでもなく可愛いらしいが、俺は今それどころでは無い。
伊「…俺が何故姉様を説教しているかわかるか」
『……小芭内を誘わなかったからかい?』
伊「……違うな」
ぐっと拳を握りしめる。
間違ってはいないが、合ってもいない。
正解の一つとも言えるが、胸の内が晴れないから恐らくそれは模範解答ではない。
"恐らく"、と確信が持てないのは、俺にもそれがよくわかっていないからだ。
ただ、体内で倍々に増え続ける何かが胸のあたりを圧迫しているようで、苦しい。
正体がわからないものだから、どうしようもないのだ。
息を吐いても言葉を吐いてもその圧力から解放されることは無く、寧ろ焦りが募っていくように感じた。
『…小芭内は、あの二人をあまり良く思っていないからかな…?そんな二人と寝てしまったから…』
伊「………違うな」
これも、違うのか、じゃあなんだ、何が正解なんだ。
あぁもう、目を見るだけで伝わってしまえばいいのに。言葉では形容し得ないこの気持ちを、そのまま目の前のこの人に移してしまいたい。
肝心な所で鈍感なこの人が、理解してくれることはないのだろうが。
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……雨が降ってきた。
伊「…泣きそうな顔をしないでくれ」
『……ごめんね、どうして怒らせてしまったかわからないんだ』
伊「怒ってなどいない……この話は終わりにしよう、朝餉でも食いに行こう。もう用意はしてあるはずだ」
そうだ、怒っているわけではないんだ。
『…このまま、仲が悪いままじゃ嫌だよ…』
伊「…すまない。怒っていないのに説教をすると言ってしまったんだ。俺が悪かった」
『…そうかい…?本当に…?』
伊「あぁ、本当だ。すまなかった」
姉様を優しく抱き締める。
……ただこうするだけで、先の苦しさは消えていく。なんだ、大した問題じゃなかったのかもしれないな。
『私も、すまなかった。
…さぁ、朝餉を食べにいこう』
いつものように綺麗な笑みを携えた姉様が、俺の手を握る。
____カァァァァァァ!!!
『…………任務か』
部屋に飛び入ってきた姉様の鎹鴉が、雨水を弾くように身体を震わせた後、任務を告げた。
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うさぎもち - 無一郎かわええ・・・ (8月5日 16時) (レス) @page47 id: 6ed501a3ba (このIDを非表示/違反報告)
冰輪(プロフ) - 無惨のママみがつおい……w (8月1日 0時) (レス) @page27 id: 3dfd0d46a5 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - いつも楽しみにしてます最新頑張ってください応援しています (2021年5月21日 22時) (レス) id: 15c1247fea (このIDを非表示/違反報告)
りぽE - 錆兔好き…。 なんでこんなイケメンなん??錆兔と義勇さんに攻められたらやべぇな (2020年6月10日 16時) (レス) id: 15686f771a (このIDを非表示/違反報告)
桃綺薇(プロフ) - 鯖兎に惚れた…… (2020年4月20日 18時) (レス) id: 3e7a0f8c20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M2 | 作成日時:2020年1月18日 22時