浮雲を見上げる石塊 ページ8
瞬間、今までの団欒が嘘みたいに空気が凍る。
「…らしくありませんよ、若獅子ともあろうお人が。オレがツナのためなら文字通りなんでもするつもりで、だからこそ立場を定めたくないのはご存知のはず。
「ひでぇなあ、オレなりに考え抜いて言ってんのに」
ぐっと身を引けば、拘束はすんなり解けた。後頭部に突き刺さる警戒の視線はリボーンのものだろう。家光さんがそれを目で制し、少しの沈黙ののちため息が聞こえた。まあ聞け、と肩を軽く叩かれたので、とりあえず力を抜いて黙って次の言葉を待つ。
「お前が訳ありなのも、身動きの取れる位置にいたいのも、ボンゴレ上層部に認められてないのも承知の上だ。直接ボンゴレとは関係を持たないながら、昔から一番近くでツナを守ってきたお前にこそ、雲の守護者を任せたい。オレだってお前の立場に口を出すような真似はしたくないが、今は時間がないんだ。ヴァリアーは近々リングを奪いに来る。あちらも守護者を揃えてくるはずだ。
言い分は理解できる。むしろ突くところのない真っ当な選定理由だ。口悪く嫌味を言ってしまったのはオレの弱さ故。俯き、また「設定」が暴走しかけたのを恥入りながら、断るための言葉を探す。
「オレは…雲の守護者にはなれないです」
「“ならない”じゃなくて“なれない”か。また余計なことを考えてるんじゃないだろうな？」
やっぱり家光さんは気づいていたのか。リボーンにも気づかれてんのかなあ、オレが悪い方向に線引きしがちなこと。とくにツナ関連では程度がひどいことも。でも今回は本当にそうじゃないんだ。
顔をあげ、今度はしっかり家光さんの目を見て言う。
「オレは、次期ボンゴレボス・沢田綱吉の雲の守護者にふさわしい人物は、雲雀恭弥だと考えています」
「！！」
「彼こそが孤高の浮雲にして、守護者の使命の体現者。彼を差し置いて雲の守護者にはなれません」
事情をすべて知っている身でこの頼みを断るのはよっぽどで、しかし飲み込めないのは、原作通りにするためには雲の守護者は恭ちゃんでなければいけないと思っているから。オレが恭ちゃんのすべきことを代わりに演じても、あの結末に持っていくには足りないと確信しているから。
大空に浮かぶ彼の在り方を見て、ツナは自分の誇りに気づくのだから。
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卯月伍(プロフ) - 暁月臨さん» ありがとうございます！下手すると数ヶ月とか挟んで急に投下するスタイルですが、続きを待っていてくださる方がいると思うとモチベが上がります！ (12月21日 20時) (
レス) id: cac572832d (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - めっちゃ好きです…！続き待ってます！！ (12月12日 14時) (レス) @page30 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月伍 | 作成日時：2020年11月14日 12時
