キミガシ……え？死ななくていいって？2

〈雨が止みませんでした〉4 ページ50

遠のいていく彼の背中。



その背中に、大きくて鋭い歯が伸びる。




『！？くそっ…………!!』





よろめく足で、駆け出す。





数歩先の紫色の背中を、ぐっと押す。




『うあ゛ぁ……___!!!』


ソウ「オリっ_」


刃が肩を貫いた。


鋭い痛み。尋常ではないほど、熱くて、痛い。



…でも、それが、



それが、どうした。



『バカ止まんな走れ！！！！！！！』

別の刃が、彼に向かってまた伸びる。

ソウ「っ！！！くそっ！！！」


駆け出すソウさん。


肩に刺さった刃を、何とか抜く。


ソウ「ぐあっ………!」

先から聞こえる、彼の悲鳴。


肩の痛みも忘れるほど、私は、その声を追いかける。





早く、早く、いかなきゃ、もっと早く、




早く、彼の元へ…………!!!!






_________








『っはぁ、はぁ…………』



彼を追いかけてたどり着いた先は、出口ではなくて。





ソウ「………あぁ、オリ、か。」




何度もではいりした、瓦礫の部屋で。





ソウ「…………っ、」

『ソウさん！！！』



今まで画面に向かっていた彼のよろけた体を、残りの力を振り絞って支えた。



…いや、支えた、つもりだった。





『っ、』




結局、自分にそんな体力は残っていなくて、彼と一緒に、床に倒れ込む。



ソウ「…それ、サラに…みせ、てね。オリ。」


弱々しい声で、画面を指さし彼は言った。


画面には、見覚えのある顔。



『………ソウさん、』



体を起こし、倒れているソウさんの横に座る。


彼は、体の至る所から出血していた。

…とても、助かる傷の量じゃ、助かる血の量じゃない。


『………………ソウさん……。』




彼を呼ぶ、声が震える。




ソウ「………はは、可愛くない、顔。」






彼は、力なく笑う。



そして、ゆっくり、その赤い手を伸ばすと、私の頬に当てた。





それは、まるで、








自己紹介をした、あの時のようで。








彼が、私をじっと見つめる。









ソウ「…僕、君がいて、本当に、良かった。



…僕を信じてくれたことが、本当に、嬉しかったんだ。




…………こんな、こんな僕を、信じ続けてくれたことが、嬉しかった。」

『ソウさんはっ…………！！！





ソウさんはっ、優しい人だよ。



ずっと、ずっと、ずっと、優しい人だった。



誰かのために、動こうとする人だった。




…こんな、なんかじゃ、ない。








貴方は、優しい人だって、私はっ…私は、知ってるよ。』

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