うどん ページ35
織「…お腹、すいてない？」
…と。
何事もなかったかのように、九重は未だ血の流れる手で散乱した道具をカバンに戻しながらおれにそう尋ねた。
すべてをカバンに戻すと、やっぱり俺の腕をつかんで俺に視線を合わせてくる。
さっきと何か違うとすれば、俺の腕をつかむ手がい街で赤くなった右手ではなく、左手であるということぐらいだ。
『・・・、』
俺が何も答えられずにいると、案の定九重は俺の手を引いて歩き出す。
織「ここらへんにおいしいうどん屋があるらしくてさ、そこ行こうよ。なんかうどん食べるの久々かもなー！そこはきつねうどんがおすすめって口コミで書いてあったからきつねたのんどきゃ多分間違いないね。
まぁ私は温玉食べるけど。」
俺が、九重の右手に視線をやる。
九重は、そんな俺をちらりと見やった後、何でもないように右手をパーカーのポケットに突っ込んだ。
俺はまた、されるがまま、九重に腕を引かれるがままに自分の足を動かしていた。
織「お、今日すいてるんじゃない？さっすが平日のお昼！」
九重が連れてきたかったらしいうどん屋は、いかにも古風な店だった。カウンターや座敷の席に何人かいかにも力仕事をしていますという男性客が座っているが、彼女の言う通り店はすいている、
親切そうなおばさんに案内され、俺たちは窓側の席に座った。
織「何食べる？きつね？」
『………、……あぁ。』
織「うん、わかった、きつねね。」
すいませーん、と店員に声をかける九重。
さっきのように立ち去るような気力は起きず、彼女を見ているのも気まずくて、俺は居心地の悪さを感じながらぼんやりと机に視線を落とした。
織「そういえば最近そばもたべてないな。そうめんはもっと食べてないかも。」
そんなことを言いながら、九重がカバンの中から何かを取り出す。
机の下でごそごそとしながら話を続ける九重だったけど、一瞬白いのが見えたから、おそらく包帯だ。
また気まずく感じて、俺は視線を落とした。
九重の話を聞き流しているうちに、品物が届く。
わかっていたが、食欲はわかない。
そういえば、最後にまともな食事をしたのは、いつだったか。
織「いっただーきま…」
そんな俺の目の前で、からんと机の上に箸が落ちた。
バッと九重を見れば、包帯の巻かれた手が箸を持った形のまま固まっていた。
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レイ - 久しぶりに来てまとめて読んだ…大号泣 (6月17日 23時) (
レス) @page41 id: 818b5c433d (このIDを非表示/違反報告)
ｸﾗｲﾔ(プロフ) - みょんさん» ありがとうございます……！！！わぁぁ、そう言って頂けるとめちゃんこ嬉しいっす…これからも更新頑張ります！ (2023年3月7日 12時) (レス) id: 8a85863d1f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - ユキヤくんの過去が可哀想すぎる…でもすごく面白いです。感無量です…。ワクワク、ドキドキしながら読ませて頂いてます！更新楽しみに待っています！頑張ってください！ (2023年3月5日 19時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
ｸﾗｲﾔ(プロフ) - ハンカチモンスターさん» ありがとうございます！！！待っとってくださーい！ (2023年1月25日 10時) (レス) id: 2c9f59a9da (このIDを非表示/違反報告)
ハンカチモンスター(プロフ) - え、めちゃくちゃ気になります！更新待ってます！ (2023年1月24日 19時) (レス) id: dd4a83489c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ｸﾗｲﾔ | 作成日時：2022年5月5日 15時
