第一幕 ページ2
合格発表当日。
私は紅華歌劇学校前で、番号が載るのを待っている。
紅華乙女になるには15歳から18歳の受験の間に25倍の受験戦争に勝ち抜かなければいけない。
「大丈夫…いつも通りに出来たから…背筋伸ばしてないとね」
道中で奇妙な光景に出会ったが、とりあえずスルーしてここまで来た。
「あ、あの…」
私に声をかけて来るなんて思わなくて、振り返ると、大人しそうな女の子が顔を真っ赤にしている。見ず知らずに話し掛けるにも勇気がいることだったのだろう。
「あ、ごめん。前、見えなかった?かわるね」
「そうじゃなくて、あの…受験の時に、一緒でしたよね、相原美久さん」
フルネームで名前覚えられてるとは思わなくて、女の子の顔をもう一度見る。そして、受験の時のある光景が思い浮かんだ。
「あ!歌がすごくうまい子だよね?」
「はい!山田彩子です。一緒に合格発表見てもいいかな?」
「もちろん!」
時間が張り出されるその時まで、私は彩ちゃんこと彩子ちゃんと色々お話ししたりした。
「美久ちゃん、受験の時から堂々としてて、キラキラしててすごいなって思ったけど、ミュージカルやってたんだね」
「うん。劇団に居続けるか迷ったんだけど、紅華でしか出来ないやりたい演目を見つけちゃって。相方と親の後押しもあって受験したんだ」
「やりたい演目?」
「ベルばらのアンドレ。私の身長でも結構身長ある相方がいたから最後まで娘役が多かったんだよね」
「そうなんだね。私、受かってるかな…」
「彩ちゃんなら大丈夫だよ!あ、張り出されたよ」
彩ちゃんが顔を上げる。とある一点を見つけるなり、彩ちゃんの表情がほぐれた。
「あった!美久ちゃん、あったよ!」
「おめでとう!」
祝った後、私は自分の番号を探し始める…が、私の番号はすぐ見つかった。受験番号を知らなかった彩ちゃんも、番号を見つめる私を見れば受かったことも、固まっている理由も気付いてしまっただろう。
―――合格者一覧に赤い私の受験番号があった―――
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作者名:アルテミリア | 作成日時:2021年9月15日 9時