私だって、貴女のことわかんないよ ページ9
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一瞬の波紋が部屋全体をスキャンするように広がると、ガラスが割れるような音が響き渡った。
「は……？」
そこにはさっきまでいなかった人が数名増えている。見たことある。A級3位だ。トリガーを片手に換装が解けて唖然とした表情でこちらを見ている。見渡せば私以外、全員の換装が解けている。
痛い視線の中、無意識に亜季を見た。
「A、」
ああ、その顔。
「A、待って！」
亜季の慰留も聞かずに私は会議室を飛び出す。逃げなきゃいけないと本能が頭の中で警告を鳴らし、ガンガンと痛みを叩きつける。
どうせ追いかけてきてるであろう亜季を撒くようにグネグネと角を曲がった。なりふり構わず走って、角で誰かとぶつかって尻餅をつく。
「あれA？」
「うお、ってどうしたどうした」
見上げればひかりに三輪に米屋。困惑を浮かべる表情に苛立ってひかりの差し出した手を掴まずに立ちあがろうとした。
「A！」
いつの間にか追いついてきた亜季が腕を掴む。振り解こうとして、両手でつかまれ、床に叩きつけるように押さえつけられる。
「A聞いて、違うの、Aを特別扱いする気なんてないの」
必死に説得をしてくる亜季のその表情が、無性に腹が立ってくる。押さえつけられた腕を引き抜こうとするが、火事場の馬鹿力なのかびくともしない。
「私はお兄ちゃんといられればなんだってよかった！ずっと一緒だと思ってたのに、ボーダーなんかに入って私を置いて死んでいった！」
初めて亜季に対して大声を放った。制御できなくなっている感情の昂りで、また波紋が広がり今度は仁礼の換装が解かれる。
「また特別だとか言って、もういらない、こんなの呪いだ、」
「そんなことな───」
脳裏に浮かんだのはいつかの記憶だった。
この呪いは、もう充分私を苦しめたのではないか。
「亜季になにがわかるの」
ほぼ無意識に出た声は、私の心を掻き乱すのに十分な言葉だった。胃の中から込み上げるのは間違えなく嫌厭で、本当に吐きそうになる口を押さえながら瞬間弱まった亜季の手を振り解く。
もう追いかけてこないで。口に出たかもわからない言葉を後に走り出した。
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作者名：あのね | 作成日時：2023年3月17日 19時
