灯火は、まだ第3章 (ページ5)

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「ここの生徒だったんですね」

「まあね」

　仕方がないので本部に向かって歩く。迅は私の損ねてかけている機嫌など全く気にしない様子で話を始めた。

「それにしても懐かしいね、3ヶ月ぶりとかじゃない？」

「そうですね」

「秀次とどう？仲良くやってる？」

　ぎくりと、一瞬体がこわばる。この前のことがあってから一言たりとも話していないが、転校したての時と大して変わらない。

「特になにもないです」

　そ、と曖昧な相槌を打たれた。

　数分の沈黙のあと、迅の口が開いた。

「……優汰さんは、旧ボーダーの中でも異質な存在だったよ」

　唐突に始まった兄の話に、少し身構える。さっきの話はただの世間話だったのか。横で、思い出話をするみたいに笑う声が聞こえる。

「なんせじゃんけんでの勝ち負けをすごい気にしてたからね。自分の血を吸った蚊でさえも叩かずにいたなあ」

　そんなこと私が一番知ってると言いそうになる言葉を無理やり押し込む。

「本当はね」

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