Ep1 ページ1
A：はぁ…
家に帰る足取りはひどく重たい。
なのに今日はいつにも増して重たいのだ。
今日だけ。
そう思って来た道を引き返し、近くの公園のブランコに座った。
＊
つい最近、離婚した母はすぐに再婚を決断した。
そして高校生の私を連れ、相手の元へ引っ越してきたのだ。
今のお義父さんも悪い人ではない。私のことを気遣ってもくれる。
でも私だけ、
ついていけていない。
＊
スマホの画面を点けては、消してを何度も繰り返す。
メッセージも着信も、
何も入っていないスマホの画面を。
時刻は11時を過ぎていた。
A：帰るか…
そう吐いた白い言葉は冬の夜空に吸い込まれて消える。
°
ふとすぐ近くの大きな歩道橋に目をやると、細身の少年が歩道橋に立っているのが見えた。
何となく嫌な予感がして急ぎ足で少年の元へ向かった。
。
A：あ、あの……！
近づいてみると、私と同い年ぐらいの少年だった。
消えそうなくらいに白くて、細い。
A：あ、えっと…
少年：………
私が言葉に詰まらせていると少年はクルリと背を向けて歩き出してしまったから
A：あの、、！
あれ、なんで私引き止めてるの？
しかもまた"あの"って……
するとその少年はゆっくりと振り返ったんだ。
深くパーカーのフードを被り少し長い前髪から綺麗な瞳が薄らと見える。
その瞳は心做しか寂しそうにも見える。
少年：ヒトリなの？…
A：え？
少年：こんな時間に女の子1人って危ないから…
なんだ、そういうことか。
"ヒトリ"という言葉に私の胸は少しズキズキと痛んだ。
A：あ、え、まあ…
するとその少年は少しの間何か考えて、口を開いた。
少年：ついてくる？
って。
この頃の私は頭がおかしくなっていたのかもしれない。
"寂しい"
"ヒトリは嫌だ"
"誰かといたい"
"必要とされたい"
こんな感情が私を支配していた。
私は深く考えず、自分の気持ちに素直に従う。
私のスマホには未だ、親からの着信もメッセージの一つも、
何も来ていない。
続く
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作者名：ｷｳｲ | 作成日時：2017年12月8日 15時
