1話【月宮空斗】 ページ1
夏はまだまだだというのに、随分蒸し暑いものだ。
額に滲む汗を甲で拭い、時計を確認しようとベットの横を見れば、いつもそこにあるはずのそれがない。
「……なんでベッドの下にあるんだろ。」
ふと下に目線を落とした時に目に入った淡い紫。いつ落としたのだろうか。こんなものが落ちればそれなりの音は出るだろうが、俺も地操も気付かない程に昨晩は深い眠りについていたらしい。
ため息をつきながら拾った時計を見れば、いつもより早い時間を指していた。
こんな時間に起きたのなんて、いつぶりだろうか。
アイツが生きていたとき以来ではないのか。
今でも鮮明に覚えている。アイツと夜明けまで遊んだことも、ふざけあって周りを困らせたこ
とも。
アイツが死んだことだって。もう、何年も前だっていうのに。
物覚えは悪かったはずだろう、月宮空斗。
早く、忘れてしまえ。
早く、早く、早く。そんな記憶はここで生きるのに相応しくないだろう?
聞き覚えのある声。ずっと頭の中で聞こえる。
これは自分の声なのだろうか。それとも、数年前に亡くした友人のものなのだろうか。
「……いい加減、吹っ切れよ。しっかりしろ月宮空斗。」
自分に言い聞かせるように、そして、吐き出すように言葉を零す。
大丈夫だ、今日もここでやっていける。そんな確認をしながら、紫とピンクが入り交じったような色のネックレスを手で弄ぶ。
大事な親友からのプレゼント。俺はもう、これを手放せないだろうなぁ。
そろそろ皆が起き出す時間だ。朝食もきっと直ぐに出来上がる。
まだベッドでぐーすか地操を起こして一緒に下へ行こう。そして、俺の癒しである佐奈と、大切な仲間たちと朝食を一緒に食べよう。
そうしたら、いつもより重い心もどうにかなるはずだ。
ネックレス
これがあれば、俺は、大丈夫だ。
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緋雨(プロフ) - 更新しました (2019年1月27日 19時) (レス) id: a99e3f0dd3 (このIDを非表示/違反報告)
緋雨(プロフ) - 更新します。 (2019年1月27日 19時) (レス) id: a99e3f0dd3 (このIDを非表示/違反報告)
八彩(プロフ) - 終わりました。 (2019年1月12日 20時) (レス) id: 6f8b3d2233 (このIDを非表示/違反報告)
八彩(プロフ) - 更新します。 (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6f8b3d2233 (このIDを非表示/違反報告)
花梨(プロフ) - 終わりました (2019年1月11日 22時) (レス) id: 0f72c4ac28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アーレス(八彩・ユリ夜桜) x他3人 | 作成日時:2018年9月15日 13時