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ヨンヒャクニ話 ページ10

誰かにゆさゆさと起こされている気がする。

「Aさん、Aさん、起きてください」

まだ寝たい、という気持ちが強く、拒むようにもう少しと溢すけどそれでも誰かはまだ身体を揺さぶってくる。

「桜、代わって」
「ですが、遠坂先輩」
「この人の場合、がつんと言わないと絶対起きないわよ」

頭上でそのような会話がされていることをぼんやりとした思考で聞きつつ、まどろむ意識の中を漂い続けて少し。

唐突に雷鳴が響くような声に思わず飛び起きた。

「ほらね?」

目を瞬いて、声がする方を見ると得意気な顔をしているリンちゃんと、困った顔をしているサクラちゃんの二人が立っていた。

「えっと、……おはよう、ございます?」
「はい、おはようございます。とりあえず早く着替えて下に降りてきて。衛宮君が朝食を作ってくれているから」
「おはようございます。昨日着ていらっしゃった服を急ぎで洗濯と乾燥をしましたので、どうぞ」
「ありがとうございます?」

サクラちゃんに綺麗に畳まれた服を渡されたのでよくわからないまま受けとれば、二人は襖と呼ばれるドアの外へと出ていってしまった。

かつんと柱に襖の端が当たった音を聞いて、それからゆっくりと周囲を見渡す。

日の光が差し込んでいる、和室と呼ばれる部屋の中で敷き布団の上に私はいるらしい。

服は、おそらくタイガから借りたであろうパジャマを着ていた。

いつ着たのか、いつこの部屋に来て敷き布団の上で眠ったのか。

正直、昨日の記憶が途中からないためわからない。

最後にランサーの綺麗な蜂蜜色の目を見たような、見てないような。

そういえばジャンヌさんの声を最後に聞いたような聞いてないような。

僅かに残っている記憶を手繰り寄せて思い出そうとするけど、どうしても覚えていることはランサーの目とジャンヌさんの声だけ。

その後のことは一切覚えていない。

いつ飲み会が終わり、どうやって私がここまできて、どうやってパジャマに着替えたのか、何も覚えていない。

あとでタイガとセイバーとランサーの三人に事実確認をしなければ。

あと、お酒は極力飲まない方向にしないと。

そう思いながらパジャマから、サクラちゃんが洗濯と乾燥をしてくれたらしい昨日の着ていた服に着替えて、着ていたパジャマを畳む。

敷き布団も半分にして更に半分に畳もうとしたけどできなかったので半分に折って、さぁどうしようと思っていれば襖の向こうからセイバーの声が聞こえた。

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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/  
作成日時:2022年11月2日 22時

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