橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのゴ

ニヒャクヨンジュウサン話 ページ48

場違いな程に美しい色のそれは、瞬く間にして私の視界を埋め尽くしていく。

背後から聞こえるアーチャーの舌打ちを耳にしていれば、気が付けば全く別の場所に移動していた。

「……え？」

目を瞬く。

周囲を見渡せば見えるのは数時間程前にタクシーから下車した場所。

タイヤの跡があるから、きっとそう。

でも先程までアインツベルンの城にいたはずなのに。

廊下も、アーチャーも、傷付いたアサシンも何処にもいない。

「どういう、こと？」
ーーん？ ただの幻覚。
「！」

聞こえてきたアサシンの念話に周囲を見渡す。

彼は酷い怪我を負っているため、早く治癒魔術を施さないと死んでしまう。

「あ、アサシン何処ですか!? 傷の手当てをしますから霊体化を解いてください！」
ーー平気平気。傷なんて負ってねぇし。
「何を言っているのですか！ お腹に槍と、剣……を……」

霊体化を解いたアサシンが目の前に現れて、口を閉じた。

「よく見てみ？ 新しい怪我なんて何処にもないだろ？」

戯けて言うアサシンのお腹には、ランサーの宝具で受けた傷以外は確かに何もなかった。

おかしい。

私は確かに見た、アーチャーの攻撃によって身体から刃物が生えていたのを。

確かに香った、吐きそうになるほどの夥(おびただ)しい血を流していたのを。

確かに聞いたし感じた、アーチャーによってアサシンが殺され掛けているのを。

生きていることはとても嬉しいけど明らかに色々とおかしかった。

「まぁ俺も何回目かのマスターの振りをして、あいつが少しばかり関わっているのに気付いたからさ、あぁいう風に強気に出られたんだけどな」
「アイツ？」
「そ、あいつ。マスターも一回、いや二回？ 会ったことがあるんじゃない？」

アイツとはどなたのことだろう。

主張するかのように視界の端に先程見た桃色の花弁が掠めて、まさかと思う。

いやだって、彼は夢の人のはず。

確かにその夢を見た時と同じ花弁を見たけど。

「どういった縁でマスターを助けたのかは知らねぇけど、利用しない手はないって思って。結果的に俺等はあいつの幻術によって助かったという訳」
「……」

確固たる確証はないけどアサシンの言う通り、漠然とだが夢の中で出会って話したあのフードの男性のお陰で助かった。

そう思うと、あの恐ろしい出来事から解放されたことをようやく脳が理解したためか、へなへなと御行儀悪くも腰が抜けて座り込んでしまった。

ニヒャクヨンジュウヨン話→←ニヒャクヨンジュウニ話　※流血表現注意

ラッキーアイテム

鳳凰の羽根

ラッキーカラー

あずきいろ

ラッキー方角

西 - この方角に福があるはずです

ラッキーサーヴァントクラス

シールダー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す