橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのヨン

ヒャクゴジュウハチ話 ページ13

そのようなことをしていれば次の指示はあっという間にきた。

窓の外に新たな骨の小鳥が一匹、足にメモをくくり付けられて飛んでいた。

急いで会計をして外に出て、そのメモを読めばこの小鳥の案内する場所に行ってほしいとのこと。

既に先行くように飛んでいる小鳥を追い掛けるように足を進めること十数分。

到着したのは、来た時とは違うバス停であった。

「？」

どうしてバス停なのだろうか。

態々新都の方にまで来て、お茶して帰れは余りにも酷いような。

そう思いつつも先導してくれた小鳥は例に漏れることもなく私の頭の上に乗っかっている。

ケラケラ笑うアサシンを再度一睨みしていればタイミング良くもバスが一台やってきて。

ーーマスター。
「(？ どうかしましたかアサシン)」
ーーサーヴァントがいやがる。
「！」

ゆっくりと停車して乗車口を開けるバスに、アサシンの念話に目を剥く。

降車する人はいないのか、誰も降りて来ない。

ーー乗るのか？
「(……いえ、一つ見送りましょう)」

無闇な争いはしたくない。

乗らない旨を運転手へ伝えようと口を開けば。

「痛い痛い痛いッ！」

また頭をつついてくる三羽に、頭を振って強制的に小鳥を払った。

つつくということは乗車しろということだろう。

せめて言葉で伝えてくれたらわかるというのに。

心の中で若干の悪態を吐きつつ、此方を見る無機質な目の運転手に慌ててバスの中へと入った。

車内はがらんとしていて。

唯一後方の席に、知っている人が二人と知らない人が一人着席されているだけで、他の乗客はいなかった。

「え、Aさん？」

驚いたように私を見るシロウ君と、見極めるような視線のセイバーと、警戒するように私を見る知らない少女の計三人。

「……こんにちは、シロウ君、セイバー」

困ったように笑えば、少女が更に警戒をした。

どうやらこの少女も今回の聖杯戦争の参加者、らしい。

どうしたらいいかと悩んでいればバスが発車したようで。

慣性の法則に従って後ろの方へと重心を持って行かれた。

蹈鞴(たたら)を踏みつつ、すぐ側の手摺りを持って転倒は回避できた。

ほっと一息。

しかし視線を感じたのではっとして、三人を見れば目が合った。

ーーばっちり見られてたぞ。
「……」

いらない情報をありがとうアサシン。

恥ずかしさで赤くなる頬を隠すように手摺りの側の席に座って、三人へ口を開いた。

「御安心下さい。今は昼です。何かするつもりは毛頭もございません」

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