橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのヨン

ヒャクゴジュウナナ話 ページ12

時刻は昼の一時頃。

バスに揺られて私は新都の方へと向かっていた。

小鳥は私とアサシン以外は見えていないらしく、他の方の視線を気にすることなく私の頭上へ鎮座していた。

ーーマスターの頭の上、気に入られてるねぇ。
「(……乗り心地がいいのですかね？)」

窓の反射を利用して小鳥を見るけど、何処となく機嫌が良さそうな。

骨だけだから正確には不明だけど。

しばらくバスに揺られて数十分。

何個目かのバス停で頭から重みが消え、降りろと言わんばかりに車内を飛ぶので慌てて降車ボタンを押す。

料金を払いバスを降りた。

周囲を見渡せば駅前らしい、晴れ渡る空を遮るように高層ビルや娯楽施設等の人工物が目に付く。

既に頭上に居座ってしまった案内役の小鳥に、此処に連れてきて一体どうしろというにだろうか。

ーーマスター、もう一匹キャスターの使いがきたみてぇだ。

アサシンの念話に周囲を見渡せば、一匹骨の小鳥がケーブルの上で此方を見下ろしていた。

此方が気付けば羽ばたいて降りてきた。

右手を留まりやすいように差し出せば、人差し指に降り立った。

ーー足に何か括り付けられてるな。
「あ、本当です」

足にはメモのようなものが帯状に折られてくくりつけられていた。

ほどいて目を通せば見慣れた言語で、しばらくこの辺りで待機してほしいとの旨。

ーー随分と大雑把な指示をするなキャスターは。
「(まぁまぁ、キャスターにも事情があるのでしょう)」

骨鳥の嘴辺りを指で撫でてあげたら翔んだ。

かと思えば。

ーー増えた。
「……」

それほどまでに私の頭は乗り心地がいいのだろうか。

頭上に居座る骨の小鳥の数が二羽に増えてしまった。

ケラケラ笑うアサシンに、おそらくいるであろう方向を睨めば笑いながら謝られた。

説得力の欠片もない。

むっとしつつも、待機と指示を受けたので近くのカフェで待つのが無難だろう。

店員の、久し振りに聞いた拙(つたな)い英語に笑みを溢しつつ、日本語で返せば安堵の表情を浮かべるのはいつものことだった。

カフェラテとスコーンを買い、窓側の席で行き交う人の流れや表情を観察しつつ、適度にアサシンと雑談を挟む。

骨の小鳥達はスコーンを食べるかと少し崩してナプキンの上に置いてあげたけど反応はなし。

どうやら食べるという機能は備わっていないらしい。

なら何故このようにフリーダムなのか。

変わらず頭上にいる骨鳥の自由さに、実はキャスターはおちゃめな方なのかと考えたのである。

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