arc_en_ciel Ⅲ【虹】 (ページ21)

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あれからホンマに記憶がなくて。

気がついたら病院やった。

何も考えられへんくて、ロビーでぼう、としていれば、ポン、と頭に手が置かれた。

「のぞむ、久しぶりやな？」

「…ぁきとっ、せんせ、」

照史先生の優しい声と手に、涙がぽろぽろと流れて止まらない。

「んっ、くっ、はぁっ、…！」

「大毅はもうだいじょうぶや。のぞむが、大毅の事ここまで連れてきてくれたお陰やで？ありがとうな？」

俺は、感謝される人間なんかやないのに。

「…ちゃうっ…！おれ、おれっ…！」

いつもニコニコしてるお兄ちゃんにイライラして感情のままに怒鳴って、お兄ちゃんを傷つけて。“羨ましかった”のは、俺の方かもしれない。

お兄ちゃんは、どんなに辛くて苦しい時でもニコニコしてて。

俺には無いものを沢山持ってた。

ずっとずっと、お兄ちゃんが、羨ましかったんや。

「…ごめっ、…！ごめんなさっ……！」

またポン、と頭に手が置かれた。

「謝るのは、俺にやないやろ？…ほら、行っといで、」

号室の番号を教えてくれた照史先生に御礼を行って、小走りでお兄ちゃんの居る病室へ向かう。

お兄ちゃんに、『ごめんなさい』と言う為に。

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