arc_en_ciel Ⅲ【虹】 (ページ20)

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「…はぁっ、」

涙が零れるのを必死に拭いながら、行き先も無く早歩きで家から遠ざかる。

このまま、何処かに逃げてしまいたい。
…そんなこと出来るはずも無いんやけど。

「はぁ…」

誰もいない公園のブランコに意味もなく乗ってゆらゆら揺れる。

着の身、着のままで出てきた俺は、携帯も財布も無いから、やる事もない。

家出てから、どのくらいだったんやろうか。

穏やかな風に当たって、段々と冷静になってきた俺は、ゆっくりと元来た道を戻り始めた。

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「…っ！！…にぃちゃんっ！！」

「…ひゅぅっ、はぁっ、うぇっ、…！」

リビングへ入って目に入ってきたのは、何故かベッドでは無く、床に這い蹲るような格好で、呼吸を乱すお兄ちゃんの姿。

「はうぅっ、…！」

ぱしゃぱしゃと、吐瀉物を吐き出したけど、もの凄く苦しそうで。

「…もしかしてっ、」

これ、濵ちゃんの言っていた、“誤嚥” なのかもしれない。

普通は、むせたり、咳をしたりして、吐き出したり出来るんやけど、咳嗽反射の弱いお兄ちゃんは、それが出来ひん。

震える手で救急車を呼んだ。